2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ統合がイギリス公法に及ぼす影響に関する実証的・理論的研究
Project/Area Number |
13620026
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 眞澄 山口大学, 経済学部, 教授 (30314793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳井 健一 山口大学, 経済学部, 助教授 (30304471)
有田 謙司 山口大学, 経済学部, 教授 (50232062)
藤田 達朗 山口大学, 教育学部, 教授 (10209059)
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Keywords | 欧州統合 / 欧州人権条約 / EU憲法条約 / 人権法 / 庇護法制 / 国籍法制 |
Research Abstract |
03年度は最終年度のため、04年3月20日メンバー全員でが総括のための研究会を開催し、研究代表の鈴木による「EU憲法条約とイギリスの立場」の報告と質疑応答の後、研究成果報告集に各自が掲載する論文について、報告・検討した。詳細は成果報告集に譲るが、その概要を記せば、以下のとおりである。 まず、研究代表の鈴木は、「EU憲法条約草案」が03年6月に公表され新規10加盟国代表を加えた25カ国代表による「政府間会議」で目下審議されているところから、当該条約と欧州統合の関係を包括的に考察し、併せてイギリスのスタンスを検討した。また藤田は、英国における人権保障制度の新展開をヨーロッパ人権条約と英国人権法の比較から捉え、成文憲法典のないイギリスの98年人権法と従来の人権に関する国内法システムとの関係を、修正・変革と妥協・調和の二つの視点から検討してきた。さらに柳井は、欧州市民権とイギリス国籍法制の観点から、「イギリス出入国管理法制の構造転換」について、90年代の出入国管理法制の展開から2002年国籍・出入国および庇護法の成立にいたる法制の転換過程およびそのイギリス国籍法制に及ぼしうる影響について分析、検討した。そして有田は、「イギリス公益開示法」を手がかりとして、内部告発者保護制度についてとりわけ地方公共団体の取り組むと対比させつつ、事案の分析・検討を行った。 以上総じて言えることは、イギリスは欧州統合の中で「欧州の中心」に位置すべく国内法制を修正する一方で、一貫してヨーロッパの連邦化に反対し、各国のアイデンティティの尊重の下での欧州統合であるべきことを国是としていると考えられる。そしてこれは、「EU憲法条約草案」が新欧州連合のモットーとして規定している「多様性の下での統合」(United in diversity)思想と軌を一にするものと言えよう。
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Research Products
(1 results)