2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13620033
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
井口 秀作 大阪産業大学, 人間環境学部, 助教授 (80268234)
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Keywords | 国民投票 / レフェレンダム / 直接民主制 |
Research Abstract |
本研究は、フランス第三・第四・第五共和制憲法という3つの現代市民憲法を素材として、国民投票制に関する、憲法理論的、憲法史的な考察を行い、現代市民憲法における国民投票制の位置づけをめぐる憲法理論上の課題を明らかにしようとするものである。 本年度は、前年の第三共和制期の検討をふまえて、第四・第五共和制憲法の検討を行った。第三共和制憲法を近代市民憲法の「典型」とみなすならば、それは国民投票制等の直接民主制の排除を一つの特徴としていた。それに対して、第四共和制憲法の制定過程では、国民投票が重要な役割を果たしただけでなく、制定された憲法も憲法改正国民投票制を制度化しており、その意味では、近代憲法からの転換を明瞭に示したといえる。しかしながら、第四共和制憲法の国民投票制は、憲法改正に限定されており、かつ、義務的ではなかったため、その「転換」は、なお、限定的であった。 第五共和制憲法においては、憲法改正だけでなく法律に関しても国民投票制が制度化され、また、とりわけ初期においては、ド・ゴール大統領が、頻繁にこれを用いたことから、直接民主制的傾向の強化が明確化した。しかしながら、ド・ゴール大統領による国民投票が、悪用、濫用であるとする、いわゆるプレビシット論の批判を呼び起こす。その結果、ド・ゴール退陣とともに、第五共和制憲法下の国民投票制は死文化する。 90年代に入ると、学説レベルでも国民投票制をめぐる議論が盛んになるとともに、1992年のマーストリヒト条約批准をめぐるレフェレンダムの実施よって、再び、レフェレンダムのもつ政治的意義が注目を浴びるようになり、95年の憲法改正による国民投票制度の改正につながっていった。しかし、この改正の射程は必ずしも明瞭でない。
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Research Products
(1 results)