2002 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦後のイギリス軍事法に関する考察-軍法会議改革の変遷を題材として-
Project/Area Number |
13620035
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
大田 肇 津山工業高等専門学校, 一般科目, 教授 (30203798)
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Keywords | イギリス / 軍隊 / 軍法会議 / 軍事法 / ヨーロッパ人権裁判所 |
Research Abstract |
今年度は、イギリス軍法会議を1998年人権法の規定する「独立のかつ公平な裁判所」であるとした軍法会議控訴院判決(2001年1月15日、Spear事件)および貴族院判決(2002年6月12日、同事件)と、それを否定したヨーロッパ人権裁判所判決(2002年2月26日、Morris事件)とを比較検討する予定であった。しかしながら、イラクに対する軍事行動の可能性が高まるにつれ、イギリス軍事法に関するいくつかの問題点も指摘されはじめた。例えば、イラクでの軍事作戦に不可欠な軍医他の医療スタッフの不足である。イギリス軍事法には、予備役に編入されている医療スタッフ以外のそれらを徴用する法律は、存在していない。この問題を、2002年11月に訪英したとき、ケント大学ロースクールのRubin教授に質問したが、「国民徴兵制の復活はありえない」「法律による解決ではなく、医療行政との関わりの中で解決が模索されている」との返事で、王立合同軍事研究所のGoldworthy女史と会うことを勧められ、アポイントを取ろうとしたがお互いの日程が合わず、次回の訪英での課題となった。また、戦争開始の決定権は依然として国王大権のひとつであり、事実上首相の判断で決定され、国会が関与しうる法的枠組みは存在しないが、今回の軍事行動開始に関しては、かなりの国会の関与がなされた。この点に関しても、Rubin教授と意見交換をおこなってきた。以上の問題意識から、今年度前半に研究を進め、その成果をまとめたものが「イギリスの有事法制」である。 今年度後半からは、当初の予定にしたがって、イギリス軍法会議に関する相対立する判決の研究に取り組み始めたが、残念ながら、基本的な資料の分析の段階である。来年度半ばには論文のかたちで公表できる予定である。
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Research Products
(1 results)