2001 Fiscal Year Annual Research Report
商品取引所法における清算(クリアリング)をめぐる法的諸問題の研究
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13620059
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
尾崎 安央 早稲田大学, 法学部, 教授 (30139498)
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Keywords | 商品先物取引 / 商品取引所法 / クリアリング / デフォルト・リスク / 取引証拠金 / 商品取引所 / 現受渡(デリバリー) / 差金決済 |
Research Abstract |
今年度は、まず、わが国の商品先物取引の「清算」について、それを日々の値洗い(clearing)と決済(settlement)とに区分したうえで、いくつかの商品取引所に対する実地調査等をも交えて主として決済上の問題点の把握につとめた。方法として、(1)差金決済の場合(金銭の授受だけ)と(2)現受渡決済の場合(金銭の授受と物の引渡)とを区別して、そのデフォルト・リスクの分配という観点から、法律上の論点(問題点)の整理を行った。(1)においては、デフォルトとは金銭債務の不履行に帰着することから、伝統的な民商法や倒産処理法で議論される支払能力・担保能力の確保策等と商品先物取引におけるそれらとの対比を中心に検討した。証拠金の担保機能を確認できたのと同時に、臨時型の証拠金の市場管理的機能をも確認できた。証拠金のこの市場管理的機能は海外でも近時重視されている点であり、来年度の研究課題の一つである。また、資金移動のコスト・スピード・セキュリティーなどの観点からは、海外の制度を参考にしたペイメント・システム(主として金融機関を介在させた預託・資金振替等)の利用可能性を検討してみた。多くの関係者から肯定的な感触を得ることができた。他方、(2)については、特に物の引渡にかかるデフォルトが実務上も不履行・履行不能・不完全履行の三態あることを確認し、特に不完全履行におけるクレーム処理などについて実務を知ることができた。特に、実務関係者がうまくいっていると表現する実務が法理論的には実に危ういものであることを知った。その点をこれから指摘していきたいと考える。ただ、clearing とsettlement問題に関する農林水産省系商品取引所と経済産業省系商品取引所との間に温度差も感じられ、それぞれの上場商品との関連性などを含めて議論をさらに詰めて、論文等の形で成果を発表していく予定である。
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