2002 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの権利主体性を前提とした子どもの意見表明権を家族法の中でいかに定着させるか
Project/Area Number |
13620061
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
二宮 周平 立命館大学, 法学部, 教授 (40131726)
|
Keywords | 監護者の指定 / 親子の分離 / 里親 / 親権喪失 / 児童虐待 / 子の権利 / 子の意思の尊重 / 面会交流 |
Research Abstract |
親権者が子を適切に監護教育していない場合に、子の権利を守る仕組みが欠けている。例えば、現行法制度は親子の分離を認めることに慎重である。緊急の場合の一時保護を除き、養護施設への入所あるいは里親への養育委託の措置は、親権者の意に反して採ることができず、児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合には、親権者の同意が得られなくても、家裁の承認を得て、こうした措置を採ることができるが、申立件数は、児童虐待防止法成立後、増加したといっても、01年で169件、承認件数は131件にとどまる。民法上の対処として、親権喪失宣告をして、後見人を選任する方法があるが、親権喪失宣告申立件数も01年で102件、認容件数は17件、極めて深刻なケースにしか用いられていない。他方で、児相で受け付けた児童虐待の相談件数は、01年で2万件を超えている(2万3274件)。相談事例のすべてが、親子分離の必要があるとはいえないだろうが、親権者の監護が客観的に見て不適切な場合には、子の利益を最優先にして、児童福祉機関だけではなく、父母以外の家族や元里親など第三者に子の監護を委ね、親権者の立ち直りを図る方法が、もっと工夫されてもよいと思われる。 その一つとして、子の監護者指定および子の監護に関する処分を規定する民法766条を用いて、第三者を監護者に指定する方法がある。第一に、親権を喪失させるのではないことから、親権者にとって「制裁的」な受け止めをされにくい。関係者も申立てへの負担感が少なくてすむ。第二に、親権者の立ち直りの状況に応じて、第三者の監護権を優先し、親権者の監護権を事実上停止する段階から、定期的な面会交流など監護権の部分的行使を認める段階、さらには親権者と第三者が共同で監護する段階まで、柔軟に対応できる。第三に、児童福祉法上の措置をとった里親にも、監護権を保障することができ、里親家庭における養育の安定化を促進できる。以上のような長所がある。家裁実務では、結果を重視してこうした扱いをしている例があるが、法的根拠が必要であり、これを検討した。
|