2002 Fiscal Year Annual Research Report
組織体刑事責任論の新展開-同一視説・代位責任の克服と国家機関責任の追及-
Project/Area Number |
13620071
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
伊東 研祐 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00107492)
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Keywords | 組織体刑事責任論 / 両罰規定 / 国家機関の刑事責任 |
Research Abstract |
本研究は,研究代表者が単独で,2年間で実施するものであり,本年度はその2年目,最終年度に該り,以下の通りに3段階での研究を計画・実施した。 1)第1段階としては,先ず,税法等に含まれる一群の両罰規定の近時の判例・有力学説による解釈論を批判的に分析・検討し,ペーパーに纏めることを開始したが,完成するに至らなかった為,内容をやや詳細に成果報告書に記述した。遅延は,以下に述べる組織体責任論への近時の原理的批判の分析・検討とそのペーパー化を優先した為である。並行させたコモン・ウェルス諸国における組織体刑事責任論研究の動向把握は,現地調査を予定したオーストラリア及びニュージーランドでの資料収集・学者等からの意見聴取を実りあるものとする為の準備に終始することとなったが,コーポレート・カルチャー論等の所謂主観責任論の展開の上で有益な議論が行われていることが明らかとなった。 2)第2段階は,オーストラリア及びニュージーランドにおける現地調査により,法人ないし組織体処罰及び国家機関処罰について我が国で知られていない資料の収集・学者等との意見交換を行うこと,及び,それらを通じた文献資料では把握できない問題点・メリットの認識を目的とした。法人ないし組織体処罰に関しては,予想通りの資料・情報を得られたが,国家機関処罰については当地においても政治的スタンスの差異等で広範な見解の分布が存することを認識させられた。また,オーストラリアの場合,各州と国との関連で我が国には存しない問題点・理論的特徴のあることが認識された。機会を捉えて,これらについて纏め,論じる予定である。アメリカ合衆国における国家機関処罰の動向と対照すべき立法動向の提示ということになる。アメリカ合衆国での近時の反組織体刑事責任論(個人責任追及論)の動き,組織体に対するプロベーション等の刑罰論の動き等については,我が国の研究の進展との関係で学習するに止まった。 3)第3段階は,本研究の一応の取り纏めであり,独占禁止法の執行問題等と関連して組織体刑事責任への刑罰論的アプローチが近時に見られる等の点に注目しつつ,先ずは大局的に組織体刑事責任論の動向について振り返ることを目的としたが,個人責任原理との抵触等をいう近時の組織体責任論への原理的批判に鑑みて,その批判的検討・組織体責任論擁護のペーパーを至急纏めた。そのような動向の社会経済的あるいは政治的インプリケーションの分析を急ぎたい。
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Research Products
(2 results)