2003 Fiscal Year Annual Research Report
東ティモールの国家建設・国民統合問題:多エスニック国家マレーシアとの比較研究
Project/Area Number |
13620093
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山田 満 埼玉大学, 教養学部, 教授 (50279303)
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Keywords | 東ティモール / 国民統合 / 国家建設 / 開発政策 / 教育政策 / 平和構築 / 言語政策 / エスニシティ |
Research Abstract |
2003(平成15)年度は、6月と9月に2回東ティモールを訪問した。独立後の東ティモールは、治安の回復が順調である一方で、主だった産業がない経済の状況は悪化している。特に、元兵士(独立派ゲリラ兵士)と若者の雇用問題は依然解決の見込みがなく、政治社会の不安定要因になっている。以下、東ティモールの国家建設・国民統合を妨げる諸要因を整理してみたい。 (1)構造的要因としては、24年間の実効支配を行ってきたインドネシア、特に国軍や警察による人権侵害から生じたトラウマ問題が残っている。国内の政治的要因では、中央と地方の格差、国語・公用語問題、各エスニック集団への対応、市民社会・人権擁護意識・民主的手続きの未発達などが考えられる。社会経済的要因では、土地・財産制度の未発達、教育機会の不平等、石油・天然ガスをめぐる利権、外国資本への過度の依存などがあげられる。 (2)引き金要因では、インドネシア関係では、国軍兵士に対する特別人権法廷の裁判内容、国内の政治的要因では、次期選挙結果(フレティリンの敗北など)、グスマン大統領の失脚、元独立派ゲリラ兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)問題、行政サービスの急激な低下などがあげられる。社会経済的要因では、経済状況の悪化、失業の増大、貧富の格差の増大、外国人資本のオーバープレゼンスなどが考えられる。 (3)永続的要因では、旧インドネシア統合派の難民帰還問題、西ティモールなどの国境問題、インドネシア語の存続問題がある。国内の政治的要因では、独立派と統合派との和解問題がある一方で、急激に進む国際社会からの関心の低さが問題になろう。社会経済的要因では、基幹産業の欠如があげられる。さらに、米国ドル通貨使用と実体経済との乖離の問題も深刻化していくものと思われる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 山田 満, 吉川健治: "東南アジアの社会開発"埼玉大学紀要 教養学部. 第39巻1号. 143-153 (2003)
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[Publications] 山田 満: "住民参加型の平和構築手法と社会環境影響評価"社会環境影響評価の手法(研究会報告書). 6-9 (2003)
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[Publications] 山田 満: "「平和構築」とは何か"平凡社(新書). 219 (2003)