2002 Fiscal Year Annual Research Report
21世紀のEU諸国におけるポスト・ネオ・コンサーヴァティズムの研究
Project/Area Number |
13620099
|
Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
村上 信一郎 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10305675)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 篤 香川大学, 法学部, 助教授 (90222257)
津田 由美子 姫路獨協大学, 法学部, 助教授 (30247184)
阪野 智一 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10162299)
古田 雅雄 神戸市外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師
水島 治郎 甲南大学, 法学部, 助教授 (30309413)
|
Keywords | ネオ・コンサーヴァティズム / ネオ・リベラリズム / EU / 福祉国家 / ケインズ主義 / 社会民主主義 / 中道右派 / ポピュリズム |
Research Abstract |
1980年代の西欧諸国では、イギリスのサッチャー首相に典型的に示されるようなネオ・リベラリズムあるいはネオ・コンサーヴァティズムの台頭を見た。これらの新保守主義勢力は市場競争原理に基づいて戦後政治経済体制の根幹を成してきたケインズ主義的な経済政策と社会民主主義的な福祉国家体制の根底的な革新を図ろうとしていた。しかし90年代後半に入ると、社会民主主義勢力を中心とする中道左派勢力が、グローバリズムの進展や欧州市場統合の加速とも連動するなかで、市場競争原理を原則的に受容しつつも、従来の福祉国家体制の存続を図ろうとすることによって、相次いで政権の座に復帰していった。本研究の目的は、このようにして政権を失った欧州の保守・中道右派勢力が、はたして80年代のネオ・リベラリズムの発見に匹敵するような新たな理念を見出し、それによって政策革新を遂げることができるか否かを明らかにすることにあった。そこで我々が得た結論は次のとおりである。(1)市場競争原理に基づくネオ・リベラリズムに匹敵するような政策理念上の「革新」は見られない。(2)それを補償するような形で、市民生活上の安全や防犯を政治争点化する傾向を強めつつある。(3)それは移民排斥を唱えるネオ・ポピュリズムとの境界線を往々にして暖昧なものとしている。(4)冷戦時代の反共イデオロギーの再版によって動員を図ろうとする場合も見られる(イタリアの事例)。(5)反EUという争点については西欧の保守・中道右派勢力は分裂している(イギリスとフランスの相違は決定的である)。(6)反グローバリズムから極端なナショナリズムに移行するような傾向はまだ見られない。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 村上 信一郎: "政治の人格化について"神戸外大論叢. 53,2. 1-24 (2002)
-
[Publications] 村上 信一郎: "イタリアの移民問題と新右翼"海外事情(拓殖大学海外事情研究所). 50,10. 35-47 (2002)
-
[Publications] 阪野 智一: "自由主義的福祉国家からの脱却?"宮本太郎編『福祉国家再編の政治』(ミネルヴァ書房). 149-182 (2002)
-
[Publications] 藤井 篤: "現代社会民主主義政党の党員構造:フランス社会党の場合"香川大学法学部創設20周年記念論集. 301-332 (2002)
-
[Publications] 水島 治郎: "西欧キリスト教民主主義"日本比較政治学会編『現代の宗教と政党』(早稲田大学出版部). 31-63 (2002)
-
[Publications] 古田 雅雄: "ドイツの選挙制度は機能しているのか"大阪電気通信人間科学研究. 4. 1-25 (2002)