2001 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化の時代における新しい市民社会論の可能性―欧州・北米・日本の比較研究―
Project/Area Number |
13620104
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
川崎 修 立教大学, 法学部, 教授 (80143353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 純一 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (60205648)
松本 礼二 早稲田大学, 教育学部, 教授 (30013022)
千葉 眞 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10171943)
飯田 文雄 神戸大学, 法学部, 教授 (70184356)
杉田 敦 法政大学, 法学部, 教授 (30154470)
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Keywords | 市民社会(論) / 戦後啓蒙 / 大衆社会(論) / 市民政治(論) / 民主主義 / 丸山眞男 / 内田義彦 / 松下圭一 |
Research Abstract |
研究計画において予告したように、平成13年度は、主に、戦後日本における「市民社会論」を中心に検討を行った。その結果、おおむね、以下のような知見を得ることができた。(1)全体主義ないし権威主義体制の解体・民主化という文脈において、「市民社会」概念が注目されるという点で、日本のいわゆる「戦後啓蒙」と1980年代の「市民社会」の復興の間には共通性があること。(2)他方、日本の市民社会論はヘーゲル・マルクスなどの経済学的な「市民社会」観の影響を強く受けている。とりわけ重要なことは、戦前戦中期におけるアダム・スミス研究の意義であり、それらは単に学説史的研究であるに留まらず、日本資本主義の精神的基礎への批判と結びついていたことであり、このスミス研究の伝統が定式化した「市民社会」概念が、第二次世界大戦終結後直ちに「市民社会」への関心が高まることを準備し、戦前のマルクス主義を「戦後啓蒙」の社会科学へと接続したということ。(3)しかし「戦後啓蒙」の社会科学それ自体には、今日の「市民社会論」に見られるような政治・社会運動との緊密な連携はなかった。それが生じるのは、1950,60年代に入ってからであり、その画期をなすのは、理論的には「大衆社会論」をめぐる論争の展開と、実践的には「60年安保」に代表される政治・社会運動の経験をふまえた「市民政治論」の登場であったということ。 これらの知見は、9月に英国ケント大学で開かれた2001Congress of the European Consortium of Political Researchにおける松本礼二の報告によって、さらにそれを受けて12月に神戸大学で開かれた研究会によって、深めかつ共有することができた。次年度は、これを成果として発表したい。 他方、現代の市民社会論およびそれと緊密に関連する政治理論上の諸テーマ(デモクラシーの変容、リベラリズムをめぐる論争、公共性の再定義など)も、各研究分担者によって探求されている。それらはすでに発表されつつあるが、次年度はそれをより深めると共に、第一の問題群とも連関させつつ、成果として発表していきたいと考えている。
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Research Products
(25 results)
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[Publications] 川崎 修: "「自由民主主義」-理念と体制の間"〔日本政治学会年報2001年〕三つのデモクラシー--自由民主主義・社会民主主義・キリスト教民主主義--. 2001年号. 3-16 (2002)
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[Publications] 齋藤 純一: "「第三の道」と社会の変容-社会民主主義の「思想」的危機をめぐって-"〔日本政治学会年報2001年〕三つのデモクラシー--自由民主主義・社会民主主義・キリスト教民主主義--. 2001年号. 143-154 (2002)
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[Publications] 齋藤 純一: "社会の分断とセキュリティの再編"思想. 925号. 27-48 (2001)
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[Publications] 杉田 敦: "何が争点なのか-国家と市民のあいだで"大航海. 40号. 88-94 (2001)
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[Publications] 飯田 文雄: "多文化社会におけるリベラリズム(2)-ウィル・キムリカの場合-"神戸法学雑誌. 51巻4号. 147-169 (2002)
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[Publications] 辻 康夫: "プーフェンドルフと宗教的寛容-コミュニケーションの自律性とその限界-"法政理論. 32巻3/4号. 112-145 (2001)
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[Publications] 川崎 修: "「自由民主主義」-理念と体制の間"〔日本政治学会年報2001年〕三つのデモクラシー--自由民主主義・社会民主主義・キリスト教民主主義--. 2001年号. 3-16 (2002)
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[Publications] 齋藤 純一: "「第三の道」と社会の変容-社会民主主義の「思想」的危機をめぐって-"〔日本政治学会年報2001年〕三つのデモクラシー--自由民主主義・社会民主主義・キリスト教民主主義--. 2001年号. 143-154 (2002)
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[Publications] 齋藤 純一: "社会の分断とセキュリティの再編"思想. 925号. 27-48 (2001)
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[Publications] 杉田 敦: "何が争点なのか--国家と市民の間で"大航海. 40号. 88-94 (2001)
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[Publications] 飯田 文雄: "多文化社会におけるリベラリズム(2)-ウィル・キムリカの場合-"神戸法学雑誌. 51巻4号. 147-169 (2002)
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[Publications] 辻 康夫: "プーフェンドルフと宗教的寛容-コミュニケーションの自律性とその限界-"法政理論. 32巻3/4号. 112-145 (2001)
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[Publications] 杉田 敦: "デモクラシーの論じ方-論争の政治"筑摩書房. 190 (2001)
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[Publications] 千葉 眞: "「宗教・倫理・政治-一つ政治思想史的考察」千葉眞・佐藤正志・飯島昇藏編『政治と倫理のあいだ』"昭和堂. 320-338 (2001)
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[Publications] 千葉 眞: "「市民社会・市民・公共性」佐々木毅・金泰昌編『国家と人間と公共性-公共哲学5』"東京大学出版会. 115-146 (2002)
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[Publications] 杉田 敦: "佐々木毅・金泰昌編『国家と人間と公共性-公共哲学5』"東京大学出版会. 61-84 (2002)
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[Publications] 杉田 敦, 齋藤 純一: "姜尚中,齋藤純一,杉田敦,高橋哲哉『思考をひらく』"岩波書店. 128 (2002)
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[Publications] 杉田 敦: "「境界線の政治を越えて」藤原帰一編『テロ後-世界はどう変わったか』"岩波書店. 144-154 (2002)
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[Publications] 杉田 敦: "市民立法機構編『市民立法入門』"ぎょうせい. 28-47 (2002)
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[Publications] 杉田 敦: "デモクラシーの論じ方--論争の政治"筑摩書房. 190 (2001)
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[Publications] 千葉 眞(共著): "「宗教・倫理・政治-一つの政治思想史的考察」千葉眞・佐藤正志・飯島昇藏編『政治と倫理のあいだ』"昭和堂. 356 (2001)
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[Publications] 千葉 眞, 杉田 敦(共著): "共著 佐々木毅・金泰昌編『国家と人間と公共性-公共哲学5』"東京大学出版会. 294 (2002)
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[Publications] 杉田 敦, 齋藤 純一(共著): "思考をひらく"岩波書店. 128 (2002)
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[Publications] 杉田 敦(共著): "「境界線の政治を越えて」藤原帰一編『テロ後-世界はどう変わったか』"岩波書店. 247 (2002)
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[Publications] 杉田 敦(共著): "市民立法機構編『市民立法入門』"ぎょうせい. 320 (2002)