2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13630011
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
新村 聡 岡山大学, 経済学部, 教授 (00167561)
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Keywords | アダム・スミス / 信用 / 銀行制度 / 金融恐慌 |
Research Abstract |
平成13年度中に、主として次の3点について研究した。 第1は、スミス信用論の形成過程の解明である。初期の『法学講義』から『スコットランドの銀行と紙券に関する考察』をへて『国富論』に至るまでのスミスの信用理論の形成・発展過程を、スコットランドの金融史とりわけ1760年代の為替危機と1772年の金融恐慌をスミスがどのように受けとめて理論に反映させたかという観点から考察した。スミスは『法学講義』において、銀行券兌換制度と銀行間の自由競争さえあれば金融システムの安定性を維持できるという非常に楽観的な見解を抱いていた。しかし1760年代の為替危機、そして1772年の金融恐慌とエア銀行倒産を経験して、スミスは初期の楽観的な自由主義的見解を大きく修正するにいたる。『国富論』では、金融システム安定化のために、銀行自身の健全な貸し出し政策の確立が必要であり、不良債権化しやすい不動産担保融資は行わないことを提案するのである。 第2は、スミス信用理論の構造分析である。通貨学派と銀行学派のいずれからも理論的先駆者として評価されてきたスミスの信用論の二面的性格が、上記の歴史的形成過程を考慮するならば統一的に理解可能であることについて考察した。 第3は、スミス信用論を18-19世紀の英国信用理論史の中に位置づけることである。とくにスミスが、ジョン・ローおよびジェームズ・ステュアートらの土地担保発券銀行を政策手段とする紙幣重商主義と、それを批判して銀行券の経済的意義を過小評価したヒュームの両面批判を意図していたことについて検討した。
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Research Products
(1 results)