2002 Fiscal Year Annual Research Report
証券取引法制が会社支配の取得および取得後の行動に与える影響
Project/Area Number |
13630022
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Research Institution | Nagoya University of Commerce and Business Administration |
Principal Investigator |
飯島 裕胤 名古屋商科大学, 総合経営学部, 講師 (70303039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家田 崇 名古屋商科大学, 総合経営学部, 講師 (90319244)
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Keywords | 企業買収 / 法と経済学 / 株式公開買付 / 会社支配の市場 |
Research Abstract |
企業買収に関わる法規制のあり方について、経済学的視点から研究した。考えうる法規制は、弱い順に相対取引規制(市場取引・公開買付による買収を認める)、公開買付規制(公開買付による買収を認める)、全株式取得義務規制(さらに全株式の取得を義務付ける)の三つであるが、このうち相対取引規制の必要性は容易に例示できるため、主な研究対象は後者二つの規制となる。 ここでは、買収者と一部の株主の利益のために、他の株主の不利益が大きな買収がなされうる、という様相を中心に分析した。 結論は次の通りである。まず、全株式取得義務規制は不要である。これは例えば全株主にわたる共謀が存在するケースでは、規制がなくともこの問題は回避されるので自明な結論であるが、小株主分散の株主構成のケースでは明らかではなく、むしろ、個々の株主が「自分が早く買収に応じなければ他の株主が応じ株価が下がる、応じればその前に売却できる」と考え、企業に不利益を与える買収者に対しても買収に応じてしまうのではないかと考えられていた。本研究は、(公開買付規制があれば)全株式取得義務規制は不要であることを示すものである。ポイントは、公開買付には、買収に応じるか否かの期間を与え、その期間内に応じた株式売却に按分比例ルールを適用できるという機能が内在していることである。 この分析は、公開買付規制の必要性を示唆する。すなわち、もし、市場取引における買収で、分散小株主全てが同時にオファーを受け入れ按分比例ルールにより売却が決定されると期待できない限り、公開買付規制が意味を持つのである。企業買収法規制に関しては日本が公開買付規制のみを課し、英国が全株式取得義務規制も課しているという具合に対応がまちまちであり、また、日本も英国のような規制を採用すべきという意見も強かった。これに対して、本研究の結論は日本の規制が正当であることを示している。
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Research Products
(2 results)