2001 Fiscal Year Annual Research Report
audit study等を用いた我が国の低水準居住の分析
Project/Area Number |
13630054
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 雅之 大阪大学, 社会経済研究所, 助教授 (70324853)
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Keywords | 賃貸住宅市場 / 高齢者差別 / 住宅監査調査 / 所得低下リスク / 居住期間長期化リスク |
Research Abstract |
住宅監査調査は、米国で主に人種差別の検出に用いられている調査手法である。我が国では、高齢者居住安定確保法において、賃貸住宅市場における高齢者差別に関して家賃保証等の手段が講じられている。これらの政策は、大家、不動産業者、借り主へのアンケートによる、約2〜3割の住宅において高齢者差別が発生しているという認識に基づいて政策が立案されている。しかし、このアンケートによる調査手法は、高齢者への入居制限が年齢に基づくものなのか把握することができない、回答が真正なものか判断することができない等の点において不十分なものである。 このため2001年3月に大阪市及び北摂の数市においてモデル的に、年齢以外の属性(所得等)を一致させたペアを連続して、不動産業者を訪問させて、その際に紹介を受けた物件数及びその属性を統計的に処理する住宅監査調査を実施した。 この調査によって得られた結論は、つぎのようにまとめることができる。第一に約5分の2の不動産業者において高齢者は差別されており、その情報量も非高齢者に比べて約3割少なくなっている。第2に高齢者差別の要因として、将来の家賃支払い能力が低い者が差別されるとする仮説、正当事由借家が一般的な状況の下では、予想入居期間が長い者が差別されるとする仮説がデータから支持されたが、高齢者の選好を予想する不動産業者の行動が結果的に高齢者差別をもたらすとする仮説はデータからは支持されなかった。 この調査結果は、(1)高齢者への住宅市場での差別問題への政策的対応を支持し、(2)家賃保証による所得低下リスクの軽減、定期借家制度の活用による居住期間長期化リスクの軽減等の政策を支持するものである。
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