2002 Fiscal Year Annual Research Report
audit study等を用いた我が国の低水準居住の分析
Project/Area Number |
13630054
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 雅之 大阪大学, 社会経済研究所, 助教授 (70324853)
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Keywords | 住宅監査調査 / 高齢者差別 / 集中居住 / サーチモデル / 統計的差別 / 条件付きロジットモデル / 変量効果プロビットモデル |
Research Abstract |
2001年度の調査では、高齢者差別が賃貸住宅市場で存在すること、高齢者の将来所得及び居住期間の長期化のリスクが、その原因となっていることが示されたが、2002年度の調査では、賃貸住宅市場における高齢者差別と、都市における高齢者の集中居住傾向の関係が分析される。まずわが国の大都市において、非高齢者は都市全体に比較的万遍なく居住しているが、高齢者は特定地域に集中して居住している実態が示される。また簡単なサーチモデルにより、住宅市場における差別と都市における特定グループのセグレゲーションの関係が理論的に示される。その後実証分析により、「非高齢者コミュニティで高齢者に対する差別的傾向が強いこと」、「非高齢者住宅市場では、非高齢者コミュニティへの選好を反映したプレミアムがついているが、高齢者住宅市場では、差別を反映した家賃のプレミアムが観察されないこと」が明らかにされ、サーチモデルの予想及び観察される高齢者の集中居住傾向と、整合的な市場構造が観察されることが示される。そして「『高齢者の身体状況の変化のリスク、生活習慣の相違に起因する非高齢者のコミュニティ選好』及び『借地借家法の継続家賃規制を背景とした高齢者住宅市場における家賃の硬直性』がこれらの構造をもたらしている」とする解釈が示される。 さらに、2002年に実施されたより規模が大きく、調査対象を高齢者全般に拡大した住宅監査調査による結果が報告される。具体的には、監査者の年齢、所得、家族構成に関する条件を弾力的に変化させる監査調査法の実験デザインが報告され、いくつかの計量的手法による仮説検定結果が報告される。その結論は、これまでの調査よりもやや複雑なものであった。例えば「中・後期単身高齢者は、失火リスクに対応して、防災能力が低下した高齢者コミュニティで、より差別的に扱われる。しかし、前期単身高齢者、高齢者夫婦においてはそのような傾向は観察されず、逆にこれまでの調査結果と同様に非高齢者コミュニティにおいてより強く差別される。」などの実証結果が示される。このため政策インプリケーションも、年齢、家族形態毎に差別の態様が異なるため、きめ細かな制度設計が求められている。
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Research Products
(2 results)