2002 Fiscal Year Annual Research Report
公益事業の民営化・規制緩和とユニバーサル・サービス確保に関する
Project/Area Number |
13630075
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
桜井 徹 日本大学, 商学部, 教授 (00120460)
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Keywords | 民営化 / 自由化 / 公益事業 / 郵便事業 / 鉄道事業 / ユニバーサル・サービス / 国際比較 / ドイツ |
Research Abstract |
本年度の研究実績として、次の緒点を挙げることができる (1)郵便事業を中心に、2002年9月にドイツおよぴオランダで実態調査をおこない、部分的自由化後のドイツの郵便事業の競争状鰍についての知見を得たことである。フランクフルト市地域でダイレクト・メールを中心にpostmodermという名称で郵便事業サービスを捷供しているMedienservice有限会社とオランダ郵便持ち株会社(TPG : TNT PostGroup)を訪問し、前者では、ドイツポストの排他的ライセンスを認めた上での部分的自由化というドイツの郵便事業の自由化の現状を、新規参入の民間業者が肯定していることが、後者では、ドイツポストと異なる経営戦略を採用していることが明らかになった。 (2)さらにドイツにおける郵便事業規制政策を連邦議会や郵電規制庁の発表文暮およびドイツポストの営業報告書の検討などを通じて、ドイツポストの経営戦略の特徴とその聞満点を分析したことである。国際物流コンツェルンとして脱皮することがドイツポストの経営戦略であり、その問題点は、一つには、園内郵便事業において不公平な競争関係が生じていること、二つには、国際物流コンツェルンへの脱皮が国内の郵便事業の合理化および料金引き上げを背景に行われているのであり、ユニバーサル・サービスと矛盾する側面を有することである。 (3)郵便事#改革のドイツと日本の比較では、双方ともに民営化と自由化を志向している点では共通しているが、同時に対照的な側面も存在することが指摘できた。民営化の側面では、ドイツでは株式会社化と株式上場・一部売却が行われたのに対して、日本では公社化にとどまったのであり、自由化の側面では、ドイツでは、排他的ライセンス分野を設定してドイツポストを保護しているのに対して、我が国では、一定の条件を満たせば、民間参入が原則的にすべての分野で許可されるのである。この相違がなぜ生み出されたか、また、将来的に両国の改革が収斂に向かうか否かの検討は、今後の課題である。 (4)鉄道事業では、民営化後におけるドイツ鉄道の経営成練の推移とそれに関連する論議をまとめることができた。
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Research Products
(2 results)