2002 Fiscal Year Annual Research Report
環インド洋経済圏の形成における東南アジア地域経済の位置づけと役割に関する研究
Project/Area Number |
13630077
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Research Institution | Nagoya Bunri University |
Principal Investigator |
須藤 裕之 名古屋文理大学, 情報文化学部, 講師 (10269673)
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Keywords | 環インド洋地域協力連合 / 東南アジア域外経済交流 / 地域経済圏の複層化 / 域内分業 / 地域経済圏の形成 / 標準国際貿易分類 / 貿易構造 / 環インド洋 |
Research Abstract |
平成13年度から15年度の3ヵ年に掛けて行うことを予定している本研究は、急速に拡大しつつある東南アジア地域の域外交流の実態とその意味を、対インド洋地域各国との相互経済交流という脈略の中で明らかにしていこうとするものである。以上の研究目的に対し昨年度は、環インド洋地域経済の国際経済社会における位置づけを歴史的に整理した上で、1997年に正式に設立された域内経済交流フレームワークとしての「IOR-ARC(環インド洋地域協力連合)」のあり方を90年代以降の域内相互経済交流の高まり含めて検討した。こうした昨年度の研究成果を受けて、本年度は、インド洋各地域の貿易構造を各種統計データを駆使しながら検討した上で、環インド洋地域の域内分業の可能性について検討した。より具体的には、環インド洋各国の商品別輸出入額や特化係数等のデータから域内貿易構造の特徴ならびに国際経済における位置づけについて考え、特に貿易構造に関しては、その要因として「環インド洋地域協力連合」(IOR-ARC)諸国の要素賦存上の特徴にも立ち入った。最終的には環インド洋地域各国の貿易構造、比較優位、そしてその背景にある要素賦存を前提条件とした場合に、将来期待されるインド洋地域の分業イメージについて以下のような結論を得た。まず人口稠密な東南アジア、南アジアにおける一人当たり所得の上昇は、中間層の拡大を通じて、消費市場としての同地域のプレゼンスを一層高めることになるかもしれない。その際、同地域内で生産された消費財が自給自足的に消費されるだけでなく、マレーシアの対南投資にみられるように、南アジア、アフリカ地域への生産基盤の移転は、投資先地域の工業化や産業の高度化を促すことも期待されるといえる。このことはそれまで一方的に先進地域へと流れていた資源・エネルギー域内需要を満たすかたちで転換することを意味し、その意味ではオーストラリア、西アジア(中東)地域の役割は今後とも重要である。資源供給国としては南アフリカも存在しているが、同国の役割はむしろ鉱業技術など資源関連技術の域内への供与が中心となりつつある。要するにインド洋大での雁行型発展がいかに行なわれるかがその際の一つのかぎとなるかもしれない。 以上の成果の一部は、下記研究発表欄に記載した名古屋文理大学『紀要』の中にまとめさせていただいた。結論として、環インド洋地域経済圏形成の可能性とその意義は十分にあり、そのことは「大競争の時代」という新たな国際経済環境の変化を背景として、東南アジアをはじめ同地域域内各国にとってきわめて重要な経済機会となりつつある。
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Research Products
(1 results)