2001 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ金融構造における貯蓄金庫・公的金融機関の意義に関する史的研究
Project/Area Number |
13630088
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
三ツ石 郁夫 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50174066)
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Keywords | ドイツ / 銀行史 / 貯蓄銀行 / 振替銀行 |
Research Abstract |
本研究の目的と計画にしたがって、今年度はとくにワイマール期の貯蓄銀行・公的金融機関に関して国内とドイツにおいて資料を収集・検討し、その結果、次のような論点を明らかにした。 1.ドイツ「貯蓄金庫」は1908年のライヒ小切手法によって「銀行」業務を営むにいたり、第一次大戦期には戦時公債を引き受けて戦費調達に大きな役割を果たした。しかし、戦後インフレ過程における債権価値下落と銀行からの預金逃避によって、資産は大きく減少した。 2.本来「貯蓄銀行」は設置者である個別自治体の範囲内で営業していたが、第一次大戦期に州ないし邦のレベルで個別貯蓄銀行の振替業務を決済する振替銀行(公的金融機関)が設置されたことによって、貯蓄銀行の資金が広範囲に流通・運用されることになった。 3.貯蓄銀行と振替銀行は、1924年の通貨安定後、全国組織(DSGV)を結成して業務体制を整備し、おもに中下層部分の国内貯蓄資金を吸収して、これらを住宅建設とその他の自治体活動に注入した。また振替銀行は新たに自治体債券発行を引き受けてやはり国内資金を吸引し、こうして両公的金融機関に吸収された国内資金は1931年までにきわめて大きな額に達した。 4.「相対的安定期」に公的金融機関と民間信用銀行は、貯蓄預金獲得と中小企業金融の領域で業務「分業」の垣根をしだいに払いつつ競争関係を強めた。こうして公的金融機関は私的資本主義的経済関係に足を踏み入れたにもかかわらず、それは法的金融規制を受けなかったため、恐慌期の1931年には内的矛盾を露呈することになった。 以上の論点は、昨年10月の「社会経済史学会近畿部会」、12月の「ドイツ資本主義研究会」において研究発表し、関連研究者から多数のアドバイスを受けた。それらを参考にしつつ、さらに検討を加えて、今年度の成果を論文としてまとめ公開した。
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Research Products
(2 results)