2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13630090
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
黒川 勝利 岡山大学, 経済学部, 教授 (10127558)
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Keywords | 日本人移民 / 日系人 / シアトル |
Research Abstract |
本年度は、1920年代後半の米国西北部日本人コミュニティの状況について調査、研究を行い、その成果の一部を、主として「大北日報」の記事に依拠しながら、The Condition of Japanese Immigrants in Seattle and its Vicinity,1925-1929として発表した。以下、その内容を簡単に述べる。 1.1920年代前半の相次ぐ排日立法によって大打撃を受けた米国西北部の日本人社会では、それに対する反発から、1920年代後半にはかなり反米的、国粋主義的な言論が目立つようになった。しかし多くの指導者はなおもアメリカ社会の主流にとけ込もうとする努力を続けた。 2.ワシントン州労働運動に対する日本人社会の期待は、白人労働運動内部の革新派の没落によって裏切られた。北米日会や西北部連絡日会はその後も白人労働運動との協調を模索したが、そのような姿勢に対する疑問も日本人の間で強くなった。 3.1920年代の日本人社会にとっての問題の一つはフィリピン移民の増加であった。若いフィリピン労働者の流入は高齢化した日本人労働者の脅威となった。他方で彼らの購買力は日本人商店にとっていわば干天の慈雨となった。 4.排斥された日本人社会はアメリカ市民権を持つ二世の成長に期待をかけた。彼らの進路をどう切り開いていくか、いかなる職業が彼らにとって有利かについて、日本人社会内部で論争が行われた。 5.1920年代のアメリカは繁栄の10年として知られている。シアトル近辺の日本人社会もその恩恵にあずかったように思われるが、彼らがそのことを実感するのは1920年代も末期になってからのことであった。特に1928年末から29年にかけて日本人社会も繁栄を謳歌するが、29年末のウォール街の大暴落は多くの日本人にも損害を及ぼすこととなる。
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Research Products
(1 results)