2001 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス私法体系が20世紀初頭の中国社会に与えた社会経済的影響
Project/Area Number |
13630102
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本野 英一 早稲田大学, 政治経済学部, 助教授 (20183973)
|
Keywords | 会社登記制度 / 株主の有限責任制度 / 中英関係 / 香港 / 伍廷芳 / 虞洽卿 |
Research Abstract |
本年度の研究費による研究成果は、二〇〇一年一二月に神戸で開催された辛亥革命九〇周年記念国際シンポジウムで行なった報告に基づいて完成させた論文「香港会社法令を利用する中国人とイギリス政府-『ゴム株式恐慌』前後を中心に-」である。これは二〇〇〇年に出版した著書の成果を踏まえ、イギリス株式会社法を利用する中国人とは具体的に如何なる種類の人間であったかを解明し、併せてこうした中国人を在華イギリス政府当局者はどのように扱っていたかを解明した論文である。一八八〇年代初頭、香港にイギリス本国の株式会社法に準拠した会社登記制度が導入されて以来、この制度は多くの中国人を魅了して来た。というのも香港の会社登記制度には、株主の有限責任制が規定されていたからである。 万一企業が経営破綻して倒産に追い込まれても、株主は払込資本金以上の債務補償義務から免れられることを規定したこの制度を利用すべく、多くの裕福な中国人は在華イギリス人と協力して事業を起こし、香港でイギリス籍株式会社として登記手続きを済ませておきながら、香港政庁の財務監査は拒否し、香港の裁判所の法管轄権の届かない中国本土の条約港租界で事業活動を行なっていた。 この論文は、辛亥革命前後の上海、香港でイギリス籍株式会社登記制度を都合良く利用していた中国人を各種史料から掘り起こし、その中に辛亥革命期以降の著明な法律家(伍廷芳)や国民革命のスポンサーになった多くの有名資本家虞洽卿)が存在していたことを証明した。こうした中国人による制度ただ乗りの弊害、そしてこれに業を煮やした在華イギリス政府当局が会社登記制度の適用を厳格化させたことが、この時期に進展していた中国側の会社制度整備と密接に関係していたことを明らかにしたのが今年度の研究成果である。
|
Research Products
(1 results)