2002 Fiscal Year Annual Research Report
生態学的シミュレーションによるビジネスモデルの進化プロセスの研究
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13630134
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 伸夫 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30171507)
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Keywords | ビジネスモデル特許 / 技術移転プロセス / リソース・ベース / リナックス / オープン・ソース戦略 / マーケティング・モデル |
Research Abstract |
昨年度から引き続いて、ビジネスモデル(特許)と技術移転プロセスに関する制度と実態の調査を行った。ビジネスモデル特許の制度的な特性や実態についての調査をもとにして、patentabilityとmarketability、すなわち特許になりうるということとその特許で収入が入るということは別であるという特許ビジネスの現状を明らかにした。その上で、特許を取得するということは、まさに発明をビジネスとして扱うことで、本当にビジネスとして考えるのであれば、特許に金を払ってくれるライセンシー候補を一生懸命探して、ロイヤルティー収入を見込めると判断した発明だけを特許にすべきという経営学的な分析を行い、マーケティング・モデルの本質を明らかにした。 次に、こうした知見を経営戦略論に取り込むために、知的財産権を企業のresourceと位置付ける分析枠組みとしてresource-based viewのレビューを行っている。特許や商標といった工業所有権は、企業が自らの優位性を持続させるメカニズムの一つに過ぎない。より大きな経営全体の枠組みの中でとらえる必要がある。さらにこうした一種の囲い込み戦略は、Linuxに代表されるオープン・ソース戦略と対比することで、その特徴がより鮮明になる。実際にはオープン・ソース戦略は騒がれたほどには成功要因とはなっておらず、Linuxの成功も絶妙ともいえるタイミングがもたらしたものであることが明らかになったが、同時に、ソフトウェアの進化という意味ではオープン・ソース戦略のもつ意味は大きいことも明らかになった。 さらに、今年度は、ビジネスモデルの進化や伝播に関して、大学を中心とした研究機関から産業界への技術移転プロセスを中心にして、実際の事例の調査研究にも着手した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Nobuo Takahashi: "The degree of self-determination and job satisfaction of white-collar workers in Japanese firms"Annals is of Business Administrative Science. 1・1. 1-7 (2002)
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[Publications] 高橋伸夫: "ペンローズ『会社成長の理論』を読む"赤門マネジメント・レビュー. 1・1. 105-124 (2002)
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[Publications] 藤田英樹, 高橋伸夫: "日本企業における終身コミットメント"多変量解析実例ハンドブック(朝倉書店). 482-493 (2002)
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[Publications] 高橋伸夫, 高松朋史: "オープン・ソース戦略の誤解-Linuxはなぜ成功したのか-"赤門マネジメント・レビュー. 1・4. 283-308 (2002)
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[Publications] 高橋伸夫: "ビジネスモデル特許とマーケティング"経営学論集(日本経営学会). 72. 101-112 (2002)
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[Publications] 高橋伸夫, 新宅純二郎: "Resource-based viewの形成"赤門マネジメント・レビュー. 1・9. 687-703 (2002)
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[Publications] 高橋伸夫: "できる社員は「やり過ごす」"日本経済新聞社. 261 (2002)