2002 Fiscal Year Annual Research Report
企業トラブルの業績への影響と内部管理態勢のあり方についての国際的考察
Project/Area Number |
13630141
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 裕昭 九州大学, 経済学研究院, 助教授 (60325553)
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Keywords | 企業トラブル / リスク管理 / コンプライアンス / 国際企業 / 企業業績 / リスク・マネジメント / 内部管理態勢 / 企業倫理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、様々な企業トラブル(法令・倫理・社会規範などのコンプライアンス違反、訴訟、乱脈経営、経営の専横、巨額損失、環境汚染、職業モラルの低下、経営方針の誤り、など様々な企業問題の総称)を誘引する経営リスク要因を、経営者がどの程度予測し、また、リスク管理態勢の巧拙が、業績にどのように反映するかを実証的に調査することである。 平成14年度は、世界中で大規模な企業トラブルが発生した年であった。Enron、WorldComなど、米国企業の粉飾決算、日本における、みずほのシステムトラブル、日本ハム輸入牛肉偽装事件、東電原発トラブル隠し。欧州における、ABBの巨額退職金問題、バンク・ゲゼルシャフト・ベルリンの不良債権隠しなど、様々な企業トラブルが発生している。これらのケースは本研究対象として貴重な材料となったことから、新規素材として調査を行い、現在も引き続き情報の検証を行なっている。 今後更に精微化する必要があるが、これまでに得られた知見としては、(1)国際的に、企業のリスク管理態勢構築の意識が徐々に高まっていること、(2)日本企業においてもリスク管理態勢(特にコンプライアンス態勢)を充実する動きが顕著になりつつあること、(3)一方、依然として多くの企業(国籍に関わらず)において、科学的なリスク管理やアセスメントが不十分であること、(4)米国においては、勢いのある新興企業においてconformance(リスク管理や企業倫理)が軽視される傾向があること、(5)日欧米において、内部管理態勢が充実しているとされる企業では、トラブルをきっかけとして体制整備が行なわれたのではなく、企業のポリシーなどで予め支えられていた例が多くみられること、(6)企業トラブルの業績への影響度は、トラブルの態様などによって異なること、(7)投資家は、リスク管理態勢の巧拙評価に困難を来たしており、対応策を検討する必要があること、などである。
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