Research Abstract |
本研究の目的は,組織・企業の報酬制度導入の規定要因と,報酬制度の組織(業績,生産性)と従業員(職務満足,組織コミットメント),双方への影響を実証的に解明することにある.本研究での報酬制度は賃金制度と福利厚生制度,双方を含み,年俸制,ストックオプション,退職金前払い制度,カフェテリアプラン,ファミリー・フレンドリー施策などの「イノベーティブな報酬制度」を指す. 今年は「報酬制度採用モデル」構築のため,報酬制度の導入・採用に関連する理論(制度論,資源依存理論,エージェンシー理論,取引コスト理論,および戦略的選択)と,それらの理論を採用して実証研究を行った先行研究について考察を行った.研究成果の一部として「制度的プレッシャーと組織の戦略的反応」『経営戦略研究』に発表した.同研究はワーク・ファミリー・イシューへの組織関与に対する制度的プレッシャーについて,組織がいかに戦略的に反応するのか,またどのような要因が組織の戦略的反応に影響をあたえるのかを,Oliver(1991)の理論的フレームワークを使用して明らかにしようとしたものである. 企業の「イノベーティブな報酬制度」の実態を,主として厚生労働省,日本労働研究機構,社会経済生産性本部などが発行した研究資料や報告書を通じて把握した.その結果,導入状況は,企業の規模,業種によって異なる.しかし全般的に,1992年以降急激に増加していることであった.経営改革の一環として人事・報酬制度を改革している企業が多く,企業によっては「イノベーティブな報酬制度」の導入と並行して,採用制度,評価制度,キャリアプランなどの制度改革も行い,個別の報酬制度の成果を把握するのは困難な状況であった.その点は事例研究によって,ある程度解明できると考えている.今後の課題は,事例研究対象企業の選定と事例分析で得られた結果などを研究モデルにいかに反映するかである.
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