Research Abstract |
中性子星コアにハイペロンが混在し,且,超流体になっていれば,観測から要請される中性子星の速い冷却シナリオとして,「ハイペロン冷却」が有力となる。本研究の目的は,このハイペロン超流動の可否を検討することである。前年度までの研究では,(1)中性子星コアではハイペロンが混在していることを定量的に示し,現実的なハイペロン混在中性子星モデルを提案,また,(2)このモデルに基づき,n,p,Λ,Σ^-といった中性子星構成バリオンの超流動存在密度域を決定した。今年度(平成15年度)の成果は次の通りである。 1.中性子星冷却に関する各種ν放出過程(修正URCA, Cooper-pair,核子直接URCA,ハイペロン直接URCA)を対象に,(1)(2)の結果を用いて,ν放出率の実際的計算を行い,密度ρに応じてどのν放出過程が最も効いているのかを明らかにした。これにより,中性子星冷却計算に対し核物理サイドから定量的・現実的な基礎材料を提供するとともに,しばしば強調される核子直接URCA過程による速い冷却は実際には起こらないこと,Cooper-pair coolingはnの^3P_2型超流動のもたらすものが効くこと,等を指摘した。 2.ダブルラムダ^6_<ΛΛ>He("NAGARA event")はΛΛ間の引力が従来考えられていたものより相当弱いことを示唆しているが,これが本当ならΛ超流動は期待できないこと,従ってハイペロン冷却シナリオは成り立たないことを示した。また,これを打開する道筋の1つとして,ΛΛ pairingではなく,ΛΣ^- pairingによるΛ超流動の可能性を検討する新たな課題にとり組んだ。異なる2つのFermi球をもつ場合に,BCS理論を拡張し,ギャップ方程式系を定式化することを終え,目下,数値計算を進めている。
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