2002 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙環境中での一次相転移ダイナミックスと電弱バリオン生成
Project/Area Number |
13640255
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 太彦 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (70108447)
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Keywords | 宇宙バリオン数 / 一次相転移 / 宇宙論 / 電弱統一理論 / 環境効果 / 開放系の統計力学 |
Research Abstract |
1次相転移による、電弱バリオン生成の新しい機構を求めて、宇宙の熱環境中での1次相転移のダイナミックスを解明することを始めた。 まず、基本的なことを第1原理から解明するために、宇宙の相転移に密接に関係する問題である、1次元量子系の無限自由度熱環境におけるトンネル現象を研究した。実時間形式を用いて、熱環境の自由度に相当する部分を汎関数積分する手法を採用し、トンネル系が準安定状態にある期間に適用して、半古典近似で環境積分を実行した。この結果得られる、影響汎関数(正確にはそのウィグナー変換)と量子力学のバリアー透過率を組み合わせて、熱環境中での1自由度系のトンネル確率を求めた。 興味ある結果として、準安定状態で環境からエネルギーをもらって励起が起こり、トンネル確率が増大することを発見した。詳細な数値計算により、この効果は量子トンネル系と環境との結合の強さ、すなわち摩擦等の散逸の大きさと関連することを確認し、結合がある程度弱い場合に効果が大きいことを定量的に明らかにした。これは、準安定状態での非線形共鳴であり、線形近似では、パラメータ共鳴現象であると解釈できる。 また、励起的トンネル効果をより詳しく解析して、一次相転移が早い時間スケールで完了する可能性を定量的に明らかにした。 この成果は、現在投稿準備中で近々発表予定の詳細な論文に記述される。
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