2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640267
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 泰 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (50202320)
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Keywords | 弦理論 / 弦の場の理論 / タキオン凝縮 / 非可換幾何学 / Moyal積 / 真空解 / 行列模型 / 散乱振幅 |
Research Abstract |
Dブレーンの生成消滅過程は弦理論の非摂動論的な現象の中で最も中心的なテーマの一つである。本研究では弦の場の理論という観点からこの過程の研究を行っている。本年度は非可換幾何学の最も基本的な定式化であるMoyal積の概念を用いてこの現象がどのように捉えられるのかについて、研究を行った。 まず米国USCのBars教授との共同研究で、弦の場の理論のMoyal積を用いた定式化を行う上で根本的な問題となる、基本行列の積に現れる結合則の破れを指摘した。この現象は基本行列が無限次元であることに付随して起こる特異な現象であるが、開弦の積には必然的に出てくるものであり、その取り扱いには非常な注意が必要となる。この研究では結合則が破れる代数を変形することにより、有限次元の行列でも表現可能なものになることを証明し、Moyal積を用いた定式化を厳密に定義した。次にこの構成法を用いて、弦理論を議論する上で本質的な役割を果たす共形代数の表現がどのようになるかを導いた。さらに通常の作用素形式で現れるNeumann行列がMoyal積を用いた定式化でも導くことが可能であることを証明した。Moyal積を用いた定式化は通常の作用素形式を用いたものに比べると、それ音同じ情報を含んでいながら、はるかに簡単な構造をしていることがわかった。特に開弦の積が自明な形に書けることが非常に大きな発見であった。このことによりブレーンの生成消滅のプロセスを記述する、弦の場の理論の運動方程式が厳密に解ける可能性があることが理解できてきた。 次に同じくBars氏および東京大学理学部の研究員岸本勲氏との共同研究により、Moyal積の定式化を用いた弦の散乱振幅のあからさまな計算を行った。通常弦理論の高次の摂動振幅は高度な数学を用いて(リーマン面のモジュライ理論を用いる)計算するしかなかったが、この方法を用いると簡単な代数計算で導けてしまうことが大きな驚きであった。さらにこの方法を用いて弦の場の理論の運動方程式を書き換え、それが階数1の異常項を除いて完全に可解であることを証明した。運動方程式自体は非線形であるが、非可換幾何学のソリトンの概念を用いると全ての解があからさまな形で求まってしまうのは大きな驚きであった。また階数1の異常項自体もこれらの厳密解に対する補正項として導入可能であることがわかり、従来の研究の疑問点、すなわちどこまで非可換幾何学の手法が弦の場の理論に適用可能なのかをあからさまな形で明らかにした。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] I.Bars, Y.Matsuo: "Associativity Anomaly in String Field Theory"Physical Review D. 65. 126006 (2002)
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[Publications] I.Bars, Y.Matsuo: "Computing in String Field Theory Using The Moyal Star Product"Physical Review D. 66. 066003 (2002)
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[Publications] I.Bars, I.Kishimoto, Y.Matsuo: "String Amplitudes from Moyal String Field Theory"Physical Review D. (印刷中).