2002 Fiscal Year Annual Research Report
原子核乾板性能専用評価装置による新乳剤機械塗布乾板の評価研究
Project/Area Number |
13640275
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
星野 香 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70022738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 光廣 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90183889)
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Keywords | 原子核乾板 / 電離損失 / 荷電粒子識別 / パイ中間子 / ミュー粒子 |
Research Abstract |
原子核乾板の性能は最小電離荷電粒子の飛跡が単位長さ当りに作る銀粒子(グレイン)の数GDと、飛跡に無関係に存在する単位体積当りの銀粒子(フォグ)数FDで評価される。原子核乾板に蓄積された荷電粒子の飛跡を高倍率の対物レンズで、CCDカメラに結像させる。その飛跡は大きさが0.7ミクロン程度のグレインで、焦点を合わせる事でCCDの数ピクセルに及ぶ信号が認められる。最大の信号を出すピクセルをその粒子の位置として定義し、焦点面を変えながら映像を取り込むことで断層映像を得る。昨年度は得られた映像から100ミクロン当たりのグレイン数を直接数えることで感度評価を行った。乾板面に水平方向の飛跡はこれで評価可能であるが、乾板に垂直に近い角度で入射した粒子への応用はグレインが複数のフレームにまたがって記録され、同じ手法は使えなかった。 課題の最終年の為発想を転換し、CCDで測定できる黒化度を使って荷電粒子が乾板を通過する際に遭遇するエネルギーの電離損失を評価した。同じ運動量の荷電粒子はその質量が異なると電離損失量が異なるが、この方法でそれが分離可能である事を検証した。高エネルギー加速器研究機構のPSテストビームからの運動量1.2GeV/c正荷電のビームには2次粒子であるパイ中間子と共にエンルギーを失った陽子がほぼ同数存在する。このビームに我々と富士写真フイルムで開発した量産型原子核乾板フィルム(オペラフィルム)を29枚かさね、50ミリラジアン傾けて照射したサンプルにこの方法を適用した。結果は、一枚のフィルムに有る飛跡の黒化度(パルスハイト)の分布は、半値巾6で25に峰を持つ分布を得た。これを29枚すべてのフィルムに適用し、今度はすべてのフィルムにまたがる一本一本の飛跡毎に29個のパルスハイトの平均値を求めた。その結果、パイ中間子に相当する半値巾2で23.5に峰を持つ分布と、ほぼ同じの半値巾で27弱に峰を持つ分布に明確に分離した。運動量が低い領域において電離損失の差は大きくなる為、質量差の少ないパイ中間子とミュー粒子の判別にも応用が可能であると考え、それを可能にするテスト照射を完了し、継続して研究中である。
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