2003 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属電極表面からのスピン分極電流の第一原理計算
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13640337
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石田 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60184537)
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Keywords | トンネル伝導 / 電界放出 / 密度汎関数法 / グリーン関数 / ランダウエア公式 / 第一原理計算 / 国際研究者交流 / ドイツ |
Research Abstract |
本研究の目的は,遷移金属電極の界面構造を流れるトンネル電流,電極からの電界放出電流を,密度汎関数法の範囲で第一原理から計算する方法を開発し,興味ある系に応用することである。平成15年度は,年度中にドイツ・ユーリッヒ研究センターからつくば産業技術総合研究所に異動したポストドクター研究員Wortmann氏および大脇氏と,電極からの電子の電界放出およびトンネル電流の基礎理論に関する共同研究を行い,ミラノ・ビコッカ大学のTrioni博士のグループと半無限固体表面の電子構造計算プログラムの改良を行い,また同プログラムを用いて英国ウェールズ大学のInglesfield教授のグループとCu表面上の酸素吸着層の電子構造を調べた。主な成果は以下である。 1.Fe/MgO/Fe磁性トンネル接合におけるトンネル電流の計算(Wortmann氏の博士論文) 共同研究者のWortmann氏によって,磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM)として最近注目されているFe/MgO/Fe磁性トンネル接合のトンネル伝導度が,エムベッディング法とFLAPW法を組み合せた第一原理Green関数計算プログラムおよびLandauer公式を用いて計算された。 2.一般化勾配近似(GGA)交換相関ポテンシャル,鏡像ポテンシャルの計算(Trioni博士のグループとの共同研究) エムベッディング法とFLAPW法を組み合せた第一原理のGreen関数計算プログラムにおいて電子の交換相関ポテンシャルを局所密度近似(LDA)から一般化勾配近似(GGA)に改めた。これによって電界放出を計算する際,極めて重要になる遷移金属の仕事関数の計算値の実験値との一致が良くなった。またモデル的な鏡像ポテンシャルを導入して,鏡像準位も計算できるようになった。 3.バルク状態,表面状態からのトンネル電流を同時に計算する新公式の導出(Wortmann氏,大脇氏との共同研究) 平成14年度にエムベッディングポテンシャルを用いてLandauer公式を再定式化したが,Landauer公式には電極内部から入射するバルク状態のトンネル電流への寄与しかなく,表面状態からのトンネル電流が計算できなかった。表面準位は真空内の連続状態と結合して共鳴準位になり,その寿命の逆数としてトンネル電流が見積もれる。エムベッディングポテンシャルを用いて,この表面共鳴準位の寿命を書き表すことに成功し,さらに表面電流・バルク電流の両者を同時に計算できる新しいトンネル伝導度の表式を導いた。これを用いてCu表面からの電界放出を再計算した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Ohwaki, H.Ishida, A.Liebsch: "First-principles calculation of field emission from metal surfaces"Physical Review B. 68巻. 155422(1)-155422(4) (2003)
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[Publications] I.Merrick, J.E.Inglesfield, H.Ishida: "Electronic structure and surface reconstruction of adsorbed oxygen on copper (001)"Surface Science. 551巻. 158-170 (2004)