2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640349
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森下 將史 筑波大学, 物理学系, 助手 (90251032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 丈夫 福井大学, 工学部, 助教授 (00206723)
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Keywords | 2次元量子スピン系 / 量子固体 / 多体交換相互作用 / 零点空孔子 / 吸着構造 / ヘリウム3 |
Research Abstract |
グラファイト表面上の吸着ヘリウム3薄膜において、吸着第1層・第2層の固相は2次元量子スピン系のモデル物質を与える。一方、この系の磁性はヘリウム3原子の循環的位置交換に由来する多体交換相互作用により支配される点で特異な系となっている。面密度とともにこの系の磁性は変化を示し、多体交換相互作用の競合の面密度依存性の結果と考えられている。しかし、その詳細は明らかでなく、むしろ多くの謎が残されている。我々は、原子交換には吸着ポテンシャルのcorrugationが強く影響を及ぼし、交換相互作用の競合は吸着構造に大きく依存していると考え、吸着構造についての考察を進めている。経路積分モンテカルロ計算により、いかなる吸着系においても観測されていない特異な吸着構造が、この系では安定になる可能性を指摘し、また、比較的高面密度の領域において構造相図を提案した。この相図は、面密度の増大に伴う反強磁性相から強磁性相への移行に定性的な説明を与えるだけでなく、従来説明できなかった実験結果を非常によく説明できるものである。一方、低面密度の領域で存在が予測されている空孔子について、直接的な証拠は従来いっさい得られていない。我々の比熱測定から得られた、多体交換相互作用の競合の面密度依存性は、空孔子の存在を仮定することによりよく説明できる。このときの空孔子は熱空孔子でなく、零点空孔子であることは比熱測定から明らかであり、比熱における異常なバンプ構造も零点空孔子の存在を示唆している。上記の2つの中間の面密度領域についても、striped superheavy domain wall構造からhoneycomb heavy domain wall構造への移行を指摘している。これも、従来、謎とされていた実験結果を説明できるものである。この領域については、比熱測定からも多体交換相互作用の競合の面密度依存性について調査を進めている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] M. Morishita, T. Takagi: "Evolutions of Competition of Multiple-Spin-Exchange Interactions and Structure in Submonolayer Solid ^3He Film Adsorbed on Grafoil"Physical Review Letters. 87・18. 185310-1-4 (2001)
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[Publications] M. Morishita, H. Nagatani, Hiroshi Fukuyama: "Anomalous Temperature-dependence of Nuclear-Spin Heat Capacity of Submonolayer Solid ^3He Adsorbed on Graphite"Physical Review B. (in press).
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[Publications] M. Morishita, T. Takagi: "Adsorption Structure of ^3He Monolayer Solid Film on Grafoil"Journal of Low Temperature Physics. (in press).