2001 Fiscal Year Annual Research Report
原子の持つ複合自由度の秩序状態とX線分光・散乱の理論
Project/Area Number |
13640365
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
城 健男 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 教授 (20093487)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋原 浩 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助教授 (40226220)
田中 新 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助手 (70253052)
|
Keywords | 軌道秩序 / 軌道磁気モーメント / スピン磁気モーメント / X線吸収線二色性 / 共鳴X線散乱 / ペロフスカイト / バナジウム酸化物 / スピン軌道相互作用 |
Research Abstract |
(1)ペロフスカイト型遷移金属酸化物のスピンと軌道状態 遷移金属酸化物の中で、3d電子が結晶場によって別れたxy, yz, zx軌道を部分的に占有しているTi酸化物において、スピンと軌道状態の関係を議論した。まず、強磁性体YTiO3において、いわゆるG-typeとC-typeヤーン・テラー変形に対応する軌道秩序それぞれの相対的安定性を、Tiイオン間の電子移動に関する4次摂動に基づき議論した。その結果、4次摂動項にC-typeを安定化させる項があることを見い出した。次に、反強磁性体LaTiO3において、スピン軌道相互作用の固有状態からスタートしてTiイオン間の電子移動に関する摂動計算を行った。それにより、Tiの磁気モーメントに軌道磁気モーメントが大きく寄与すること、軌道縮重に伴う揺らぎが大きい系であることを指摘した。 (2)V2O3のスピンと軌道状態および共鳴X線散乱とX線吸収線二色性 歴史的に極めて議論の多いV2O3において、最近共鳴X線散乱に対し、軌道秩序の存在を仮定した解釈がなされている。この研究では、そうではなく、スピンに伴う軌道磁気モーメントの存在と格子変形を考慮することにより、実数の波動関数で記述される軌道の秩序がなくても実験が説明できることを示した。またこの立場からこの系の金属絶縁体転移の機構を考える上で、Vイオン対のtiltingを取り入れることが重要であること、絶縁相での反強磁性常磁性転移は、磁気モーメントの規則不規則転移だけでなくVイオン対のtiltingの方向のそれも伴うことを有効スピン模型を用いたモンテカルロシミュレーションにより示した。さらに、予想されるV2p内殻X線吸収線二色性を議論した。これらの議論を通じて、この系は、いわゆるハバード模型をもとに議論されるモット・ハバード金属絶縁体転移が起こっている系ではないことを指摘した。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] T.Jo: "Hartree-Fock study of orbital magnetic moments in 3d and 5f magnets and X-rav magnetic circular dichroism"Journal of Synchrotron Radiation. 8. 115-119 (2001)
-
[Publications] T.Jo: "Theory of resonant spectroscopies in nickel, cerium compounds and other systems"Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena. 117-118. 397-411 (2001)
-
[Publications] T.Jo: "Orbital Ordering and Jahn-TelIer Distortion in YTiO3"Journal of the Physical Society of Japan. 70・10. 3080-3081 (2001)
-
[Publications] A.Tanaka: "Electronic Structure and Phase Transition in V203: Importance of 3d Spin-Orbit Interaction and Lattice Distortion"Journal of the Physical Society of Japan. 71・1(発表予定). (2002)