2002 Fiscal Year Annual Research Report
雪氷コアによる過去500年間の北太平洋DICEの復元
Project/Area Number |
13640432
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
白岩 孝行 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (90235739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 教幸 地球観測フロンティア, IARC複合分野, グループリーダ (10261348)
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Keywords | カムチャツカ半島 / 氷河 / 火山 / 雪氷コア / 数値モデル / PDO / 気候変動 / DICE |
Research Abstract |
本年は、1998年にカムチャツカ半島で掘削された全長212mの雪氷コアに記録された北太平洋DICEを正確に復元するために、コアの歪履歴を理論的な見地から検討した。海外共同研究者であるHeinz Blatter教授(スイス国立工科大学大気気候学研究所)と共同で、2次元の高次力学モデルを開発した。従来の層流近似モデルでは剪断応力のみを考慮したのに対し、このモデルでは縦偏差応力を加えた点に新しさがある。対象としたコアが掘削されたウシュコフスキー火山山頂の基盤地形は、クレーターであるため、アスペクト比の大きな凹型を呈する。従って、縦偏差応力が重要となることが予想されたからである。開発されたモデルによって表面流動速度を算出したところ、水平成分については、層流近似モデルによって計算される値の10分の1程度の流動速度しかないことが判明した。鉛直成分の値は、底面での融解量の与え方に大きく依存するため、現段階ではよくわからない。このモデルを用いて、コアの酸素同位体にみられる季節シグナルについて、歪補正を行った。その結果、過去170年間の涵養速度(降水量)変化を復元することに成功した。この降水量の年々変動には、32.1年、12.2年、5.1年、3.7年という卓越周期が認められた。これらは、北太平洋で生じているPDO(Pacific Decadal Oscillation)と呼ばれるDICEの一形態と良い関係があり、PDOの寒候期にはカムチャツカ半島の降水量が増え、暖候期には減少するという関係が認められた。すなわち、カムチャツカ半島の山岳地帯における降雪量変動は、北太平洋で生じる10年〜数十年スケールの気候変動に大きく依存していることが明らかとなった。また、このコアの記録から、PDOが過去170年間にわたって北太平洋で生じていることが世界ではじめて明らかとなった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 白岩孝行, 山口 悟: "カムチャツカ半島の近年の氷河質量収支変動と気候変動復元"地学雑誌. 111.4. 476-485 (2002)
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[Publications] Shiraiwa, Tchoumitchev: "Mountain environment in Kamchatka : physical backgrounds and recent changes in the climate and glaciers"Global Environmental Research. 6.1. 19-30 (2002)