2001 Fiscal Year Annual Research Report
衛星データを用いた極成層圏雲の組成推定に関する研究
Project/Area Number |
13640438
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
林田 佐智子 奈良女子大学, 理学部, 教授 (70180982)
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Keywords | 大気科学 / 極成層圏雲 / 成層圏エアロゾル / 成層圏オゾン |
Research Abstract |
極成層圏雲(Polar Statospheric Clouds ; PSCs)は、極域下部成層圏における大規模なオゾン破壊現象において重要な役割を果たしており、PSCsの化学組成および相を知ることは、冬季/春季極域におけるオゾン破壊メカニズムの詳細を知る上で非常に重要である。ILASは、1996年11月から1997年6月までの約8ヶ月間にわたり、両極域において、オゾン、硝酸、水蒸気等の成層圏大気微量成分およびエアロゾルの高度プロファイルを観測した。我々はILASの780nmエアロゾル消散係数データの解析を行って、同年冬季北極において多くのPSCイベントが観測されていたことを報告し、その時間・空間分布を示した[Hayashida et al.,2000]。本研究ではさらに、観測されたPSCsの化学組成を推論することを目的とし、PSCsの組成として液相粒子であるSTS(supercooled ternary solution)、固相粒子であるNAD(nitric acid dihydrate)、NAT(nitric acid trihydrate)を考慮して解析を行った。熱力学平衡を仮定した。PSC理論値との比較の結果、1月中旬の高度22km付近ではSTS理論値に近い値をもつデータが多く、またPSC時期の後期にあたる3月初旬には、消散系数値、硝酸値ともにNAD粒子、NAT粒子の存在を示唆しているデータが得られていることがわかった。さらに、これらのPSC粒子を含む空気塊が経てきた流跡線を解析したところ、1月中旬のSTS粒子の気温履歴は典型的な液相粒子形成プロセスと矛盾していなかった。さらに流跡線に沿って計算した液相に対する固相の飽和度から、3月初旬に観測されたNAD/NAT粒子はhomogeneous nucleationによって形成されたものと考えられる[Saito et al.,2002]。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] N.Saitoh, S.Hayashida, Y.Sasano, L.L.Pan: "Characteristics of Arctic Polar stratospheric clouds in the winter of 1996/1997 inferred from ILAS measurements"Journal of Geophysical Research. (印刷中).