2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640499
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
豊田 東雄 山形大学, 教育学部, 教授 (40007240)
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Keywords | 環状共役電子系 / 擬ヤーン・テラー効果 / ab initio MCSCF計算 / エネルギー分割 / 分子対称性の低下 |
Research Abstract |
環状共役8π電子系における非平面構造の安定性の起源を解明するために、ab initio MCSCF+MP2(MRMP2)分子軌道計算を行い、安定化に寄与するエネルギー成分を解析した。 1.最安定な分子構造 7員環のAzepineは面外核変位を通じて擬ヤーン・テラー効果が働き、平面C_<2V>構造からボート形C_s、構造へと対称性の低下を起こす。対称性低下による安定化エネルギーは3kcal/molと算出された。OxepinではAzepineと同様に、平面C_<2V>構造からボート形C_2、構造へと対称性低下を起こし、その安定化エネルギーは3.3kcal/molと算出された。8員環の1,5-diazocineでは、平面D_<2h>構造から平面C_<2h>、構造へと面内核変位を通じて対称性低下を起こし、更に、面外核変位を通じて桶形C_2構造へと対称性低下を起こす。第一及び第二段階の構造変化に伴う安定化エネルギーはそれぞれ9.2及び27.9kcal/molと算出された。また、1,3,5,7-tetrazocineのD_<4h>、構造は二次の鞍点を示し、平面C_<2h>、構造あるいは非平面D_<2d>構造を経て桶形S_4構造へと対称性低下を起こす。D_<4h>構造からS_4構造への対称性低下に伴う安定化エネルギーは44.2kcal/molと算出された。 2.非平面構造の安定化の起源 平面から非平面構造に変化する際に、電子核間引力エネルギーは低下する一方で、電子間反発エネルギーと核間反発エネルギーは増大することが見出された。この結果から、ここで取り扱った共役分子について、次の結論が導かれる。「分子骨格が屈曲して非平面な形状になると、電子間、核間、及び電子と核との間の距離は短くなる。前者の二つに起因する静電斥力相互作用は、分子骨格の変形に伴いそれらのエネルギーは増大するのに対して、電子核間引力エネルギーは大きく低下する。この引力エネルギーの低下量が反撥エネルギーの増大量を十分に償うので、非平面構造の安定化が実現する。」
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