2001 Fiscal Year Annual Research Report
生体中の水構造解明の手がかりとしての有機化合物中の疎水性基の水和メカニズムの解明-CH伸縮振動の波数とケミカルシフトの濃度・温度依存性の測定-
Project/Area Number |
13640504
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
水野 和子 福井大学, 機器分析センター, 助教授 (10126641)
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Keywords | ケミカルシフトの温度依存性 / 外部複基準法 / 疎水性基の水和メカニズム / CH…O水素結合 / blue-shifting水素結合 / ケミカルシフトの濃度依存性 / C-H伸縮振動バンド |
Research Abstract |
1.ケミカルシフトの温度依存性測定法の確立 ケミカルシフト測定は,先端を球状にした細管に基準物質の純液体を封入して内管とし,観測される2本のシグナルの間隔からバルクの体積磁化率を得て補正するもので,測定条件の異なるケミカルシフトを厳密に比較ができる.本研究では,試料の温度がTで,基準物質の温度がすべての試料に共通の温度,Tr,であるような仮想的な条件についての電磁気学的な考察から,基準物質のケミカルシフトの温度依存性を得る式を求め,これを実測して得た.これを利用することで容易にケミカルシフトの温度依存性が得られる.この成果をAna. Chem.に投稿準備中である. 2.CH基の水和メカニズムの修正 これまで,C-H基の水和について,水の酸素電子による,C-H水素の電子押し込みモデル(pushball hydration model)を提出してきた.しかし,本研究に着手して以来,投稿した論文のreviewerによるこのモデルへの批判,8月に参加した国際溶液化学会議での議論の成果を得て,CH・・・Oによるものであると修正した.この修正モデルをJ. Am. Chem. Soc. に投稿中. 3. CH…O水素結合についての赤外分光法とNMRのケミカルシフト,J値などについての基本的な特徴の検証 CH…O水素結合は,酵素の3次元構造形成に重要な役割を果たしていることが知られているが,溶液中での形成についてはまだ報告されている研究が非常に少ない.一方,ab initio法を利用した研究は多く見られる,注目すべきことは,C-H伸縮振動バンドのブルーシフトと吸収強度の減少という計算結果で,実際にこれが観測されるかどうかを有機溶媒系で実験的に確認する作業を行った.その結果,この2点が確認された.これらは,アセトンなどを水で希釈するときに観測されるものでもあり,2の水和モデルを支持する.
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