2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640525
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩岡 道夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (30221097)
|
Keywords | セレン / タンパク質 / 酸化還元試剤 / ジスルフィド結合 / フォールディング |
Research Abstract |
タンパク質の立体構造は,弱い原子間相互作用の微妙なバランスによって維持されている。ジスルフィド結合(SS結合)1よその中では最も強い相互作用に属し,これを切断したり生成したりすることによりタンパク質立体構造を人工的に制御することが可能である。実際にタンパク質の立体構造を制御するためには,これまでグルタチオンやDTT,2-メルカプトエタノールなどの水溶性イオウ試薬が用いられてきた。これらのイオウ化合物はタンパク質と反応してその酸化状態を制御することができる。しかし,反応速度が遅かったり適用できるpH範囲が狭いなどといった問題点があった。本年度は,従来のイオウ試薬のもつこのような欠点を克服するために,イオウよりも酸化還元活性が高いセレンを利用した新しい試剤を開発することを目的に研究を行った。具体的には,(1)効率的で適用範囲が広い水溶性セレン試薬の開発,(2)合成したセレン試薬を用いたタンパク質フォールディング過程の速度論解析,(3)セレン試薬によるタンパク質分子の選択的化学修飾法の開発,について検討を行った。合成したセレン試薬を用いてSS結合を4つもつ典型的なタンパク質であるウシ膵臓リボヌクレアーゼAとの反応を行ったところ,イオウの代わりにセレンを用いることの有用性が明らかになった。即ち,セレン試薬を用いることによって,広いpH範囲で高効率的なSS結合を生成することが可能となった。次年度は,合成したセレン試薬を用いてタンパク質フォールディング過程の詳細な速度論解析を進めると共に,タンパク質立体構造の安定化のメカニズムについても有機化学的観点から再検討することを考えている。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Michio Iwaoka: "Statistical Characterization of Nonbonded S・・・0 Interactions in Proteins"Chemistry Letters. 132-133 (2001)
-
[Publications] Michio Iwaoka: "Synthesis and Structural Characterization of Water-Soluble Selenium Reagents for the Redox Control of Protein Disulfide Bonds"Heteroatom Chemistry. 12. 293-299 (2001)
-
[Publications] 岩岡 道夫: "高選択かつ高効率的なペプチドSS結合の生成試剤"化学と工業. 54. 684 (2001)
-
[Publications] Osamu Takahashi: "Hydrogen-bonding Nature of the CH/pi Interaction as Evidenced by Crystallographic Database Analyses and ab initio Molecular Orbital Calculations"Bulletin of the chemical Society of Japan. 74. 2421-2430 (2001)
-
[Publications] Michio Iwaoka: "Quantitative Evaluation of Weak Nonbonded Se・・・F Interactions and Their Remarkable Nature as Orbital Interactions"Journal of the American Chemical Society. (in press). (2002)
-
[Publications] Michio Iwaoka: "Solvent Effects on the Phi-Psi Potential Surfaces of Glycine and Alanine Dipeptides Studied by the PCM and I-PCM Methods"Journal of Molecular Structure (THEOCHEM). (accepted). (2002)