2002 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性セレニン酸およびテルリン酸の光学分割と立体化学
Project/Area Number |
13640541
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
上方 宣政 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (70087112)
|
Keywords | 光学活性セレニン酸 / 光学分割 / 絶対配置 / X線結晶構造解析 / CDスペクトル |
Research Abstract |
三配位のセレニン酸は、カルボン酸のカルボニル炭素をセレン原子で置き換えた酸であると見倣すことができる。カルボン酸の炭素原子は、SP^2混成で平面構造であり、不斉炭素ではなく光学活性体となり得ないが、セレニン酸のセレン原子は四面体構造をもつキラル原子であり光学活性体が存在するはずであるが、光学活性セレニン酸に関する報告は全くない。その理由として、光学活性セレニン酸は、系中に存在する極く僅かな水との速いプロトンの授受により容易にラセミ化するため、光学活性体を安定に単離することは難しいと考えられてきたためであろうと推測される。アレンセレニン酸の芳香環に嵩高い置換基を導入すれば、光学活性アレンセレニン酸のラセミ化が速度論的に抑制することができると考え、本研究では昨年度、種々の嵩高い置換基を有するセレニン酸のラセミ体を合成し、光学活性カラムを用いたクロマトグラフィーにより、光学活性セレニン酸の光学分割に初めて成功した。しかし、これらの光学活性セレニン酸は溶媒を除去する際にラセミ化が起こり結晶として単離することは出来なかった。 そこで本年度は、ラセミ体のセレニン酸を再結晶によってそれぞれのエナンチオマーに光学分割し、光学活性セレニン酸を結晶として単離することを計画した。5種類のセレニン酸(RSeO_2H:R=Me,i-Bu,neopentyl,cyclohexyl,Ph)を合成し、種々の溶媒中から再結晶を行った結果、メタンセレニン酸をメタノール/トルエン混合溶媒中より再結晶した場合には、それぞれのエナンチオマーの結晶に分割することに初めて成功した。結晶のCDスペクトルはそれぞれ250nm付近に正叉は負のコットン効果を示し、負のコットン効果を示すメタンセレニン酸の結晶の絶対配置は、X線結晶構造解析により、S体であることが明らかになった。したがって、正のコットン効果を示すメタンセレニン酸の結晶は、R体であることがわかった。光学活性メタンセレニン酸は結晶状態ではラセミ化に対して安定であったが、溶媒に溶かすと瞬時にラセミ化が起こり光学不活性体になった。 また、得られた光学活性セレニン酸を用いる不斉酸化反応を試みた。その結果、スルフィドやセレノドに対して不斉酸化がおこり相当する光学活性セルホキシドやセレノキシドが得られたが、不斉収率は低く〜5%であった。また、アルケンの不斉酸化によるエポキシ化では、trans-スチルベンでは反応が起こらず、p-ニトロスチレンの場合は〜4%eeで相当するエポキシドが得られた。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 上方宣政: "Optical Resolution and Racemization of Areneseleninic Acids"J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1. 2151-2155 (2002)
-
[Publications] 上方宣政: "Isolation and Lability of Optically Active Telluronium Imides"Eur. J. Org. Chem.. 2265-2267 (2002)
-
[Publications] 上方宣政: "Peralkylated Four-and Five-Membered Cyclosilanes Containing a Heteroatom : Synthesis, Structure and Properties"Eur. J. Inorg. Chem.. 1772-1793 (2002)
-
[Publications] 上方宣政: "Silver Complexes with Unsaturated Thiacrown Ethers : Inclusion behavior of Conformationally restricted Macrocycles"J. Org. Chem.. 67. 6632-6637 (2002)