2002 Fiscal Year Annual Research Report
高歪環状フェロセンの開環反応を利用した多核錯体の合成とその反応性
Project/Area Number |
13640560
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
水田 勉 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70221603)
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Keywords | フェロセノファン / 高歪みリン化合物 / 開環反応 / 光反応 / ヘテロ多核錯体 / P-C結合解裂 / 光重合 / ring slippage |
Research Abstract |
リン架橋[1]フェロセノファン配位子[Fe{Cp_2P(S)Ph}](1)は、フェロセンの上下のCp環がリン原子で結ばれているため、分子内に大きな歪みを有している。このため、リン架橋[1]フェロセノファン骨格は、容易に開環する。 リン架橋[1]フェロセノファン配位子の光開環反応機構の解明 昨年度行った研究により、1は、光照射より開環反応を起こしオリゴマー化することを明らかにした。さらに、この開環反応の機構は、鉄にη^5配位している2つのCp環のうちの1つがη^1へとring slippageを起こし進行することを見出した。本年度は、このring slippageした[Fe{(η^5-Cp)(η^1-Cp)P(S)Ph}](2)がフェロセン骨格を再生するステップの解明に取り組んだ。その結果、η^1へとring slippageを起こしたCp環に金属フラグメントが配位すると、η^5配位が形成されるともに、最初の鉄との結合が切断されることを明らかにした。また、このη^1-Cpが鉄から外れる反応は、2にPMe_3のような配位力の強い配位子を複数結合させることでも、達成された。これらの結果より、1のオリゴマー化は、1)光反応によるring slippage型の2の生成、2)2のη^1-Cpに対してもう1分子の2の鉄中心が攻撃、3)フェロセンユニットの再生、4)2番目の鉄上からのη^1-Cpの脱離の4ステップが繰り返されることで進行すると結論した。 Cp-P結合への金属フラグメントの挿入による多核錯体の合成と反応性の検討 1を配位子としてもつW(CO)_5または、CpMn(CO)_2に0価白金錯体を反応させると1のCp-P結合に白金の酸化付加的挿入が起こり多核錯体が生成した。この際、白金上の配位子をバルキーなPPh_3にすると多核化の際に配位子が脱離し、白金上に空いた配位座をもつ錯体が生成することを見いだした。この配位座は、求電子性が強く、タングステン上に捕捉されたPPh_3のP-Ph結合が、この白金上の反応サイトで切断されることを見出した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] T.Mizuta, T.Nakazono, K.Miyoshi: "Naphtho[1,8-b, c]phosphete and 1,2-Diphosphaacenaphthene from the Reaction of 1,8-Dilithionaphthalene with RPCl_2"Angew. Chem. Int. Ed.. 41. 3897-3898 (2002)
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[Publications] T.Mizuta, K.Nakayama, S.Aoki, K.Misyoshi: "Interaction modes with a halide anion of metal centers of edge-sharing dinuclear complexes bearing a bent form"Bull. Chem. Soc. Jpn.. 75. 1547-1552 (2002)
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[Publications] T.Mizuta, M.Onishi, T.Nakazono, H.Nakazawa, K.Miyoshi: "Addition of phenylacetylene to a P-C bond of phosphorus-bridged [1]ferrocenophane"Phosphorus, Sulfur, and Silicon. 177. 2157-2158 (2002)
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[Publications] T.Mizuta, Y.Imamura, K.Miyoshi: "Ring-Opening Reaction of Phosphorus-Bridged [1]ferrocenophane via Ring Slippage from η^5-to η^1-Cp"J. Am. Chem. Soc.. 125. 2068-2069 (2003)