Research Abstract |
官能基をもつアリール亜鉛化合物の有機合成試薬としての有用性が認識され,その合成法の開発に注目が集まっている。当研究室では,TMUやDMFなどの極性溶媒中,市販の亜鉛粉末を用いて行うアリール亜鉛化合物の簡便合成法を開発し,その溶液を利用する有機合成法の開発に取り組んでいる。ところで,有機金属化合物の反応の多くがTHFなどの溶媒中で行われることを考えれば,上記溶媒の極性,配位能が目的反応の進行を妨害する可能性があり,アリール亜鉛化合物の一般的利用の観点から,より極性の小さい溶媒中での合成は大きな意味をもつ。そのため,前年度,アリールハライドと亜鉛粉末の直接反応をエーテル系溶媒中で進行させる方法の開発に取り組み,アリールハライドの反応性の大小に応じて,THFから,より高沸点のジグライム,トリグライムへと溶媒を適切に選択し,温度条件を制御するだけで,各種アリール亜鉛化合物のエチル溶液が簡便に合成できることを見出した。 本年は,この溶液の特長を活用する有機合成法の開発を目指し,極性溶媒では不可能なルイス酸性試薬との共存性に着目した。さて,アリール亜鉛化合物は,最も求電子性の大きな基質の一つであるアルデヒドとの反応も起こさない。ここで,アルデヒドへの求核付加に対して,四価チタン錯体は,ルイス酸としてアルデヒドを活性化し,あるいはアリール炭素との結合形成により,アルデヒドへ付加するに十分な求核性をアリール基に賦与することから,アリール亜鉛化合物のアルデヒドへの求核付加に対して,四価チタン錯体が活性化効果を発揮することを期待し,実験を行った。その結果エーテル溶媒中,アリール亜鉛化合物とアルデヒドとの反応が,四価チタンにより円滑に進行し,目的物が高収率で得られることを見出した。この四価チタン活性化法は,各種のアリール亜鉛化合物,アリールアルデヒド,アルキルアルデヒド,更にケトンに広く適応可能であり,またエナンチオ選択的な付加も可能であった。
|