2003 Fiscal Year Annual Research Report
形態発生・生活史の環境依存性に関する研究:進化生態学的アプローチ
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13640621
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 欣也 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 助教授 (30222186)
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Keywords | 共食い / ゲーム形 / 進化ダイナミクス / 自然選択 / 突然変異 |
Research Abstract |
【背景】種内相互作用によって生じるゲーム的状況が、生物個体のある形質を自然選択の対象とさせることがある。そのような状況では、注目する個体の適応度は自身の形質と周りの他個体の形質によって決定される。形質がそのような自然選択に対し連続的に応答し、形質のバリエーションを生み出す突然変異の生じ方に一般的に想定されるある仮定が満たされている場合、形質の進化ダイナミクスは、Adaptive dynamicsと称させるメカニズムによって解析可能である(Geritz, et al.,1998)。 共食いは種内に生じる捕食者-被食者関係である。共食い形質には、種内相互作用のゲーム的状況が選択圧として作用している。共食い個体は同種他個体を捕食し、成長や個体維持を行う。同種他個体が餌として優れている場合、共食い個体は他個体に比して、生存率ばかりでなく成長率も高くなる。そのような状況では、共食い形質は集団の中に僅かにでも生じれば個体の適応度は常に高く、たちまち集団内に広がると推察させる。このような論理的推論の一方、共食いは生物界に限定的に偏在している。 【モデル解析】共食い形質の進化過程に対する理論的推論を行う場合、進化の初期において共食い形質を持つ個体の適応度に影響する状況を、より控えめに仮定する必要がある。「進化の初期においては、共食い形質(共食い率)が高いほど、共食いによるエネルギー獲得率が低い」という、より共食いが進化しづらい仮定のもとで共食い形質の進化ダイナミクスを調べるために共食い形質のadaptive dynamics modelを作成、解析を行った。 【結果・考察】他の餌の利用可能性が非常に低い場合は、共食い形質は進化しやすいが、他の餌の利用可能性が低くても、高い共食い率を持つ個体ほど共食いに支払うコストが増加し同種の餌価値が減じる状況では、同種が餌として潜在的価値が高くても共食いは進化しない。共食いは、同種内のゲームの結果として評価することが正当であることがより明確となった。 Geritz, S.A.H.,Kisdi, E..,Meszena, G.,and Metz, J.A.J.1998.Evolutionary Ecology 12:35-57.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Nishimura, K.: "Variant evolutionary trees under phenotypic variance"Journal of Theoretical Biology. 226. 79-87 (2004)
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[Publications] Nishimura, K.: "Evolution of cannibalism : referring to costs of cannibalism"Journal of Theoretical Biology. 226. 291-300 (2004)