2002 Fiscal Year Annual Research Report
岩礁潮間帯食物網の制御機構に対する生産性と環境ストレスの影響の実験的検証
Project/Area Number |
13640622
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
野田 隆史 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 助手 (90240639)
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Keywords | 栄養塩制限 / 植食 / 食物網 / 環境ストレス / トップダウンコントロール / ボトムアップコントロール / 岩礁潮間帯 / 野外操作実験 |
Research Abstract |
無機環境による食物網制御機構については「生産性要因」と「環境ストレス要因」に注目した2つの仮説が有名である。陸域や淡水域の生態系では「食物網構造と消費の強度(トップダウン効果)は、一次生産力の制限(ボトムアップ効果)が順次上位の栄養段階に波及することにより決定されている」という仮説(消費生態系仮説)が支持されてきた。一方、岩礁潮間帯では「食物網構造と消費の強度(トップダウン効果)は、環境ストレスが消費の強度を決定することで決定されている」という仮説(環境ストレス仮説)が支持されてきた。 本研究の目的は,両仮説の検証と統合をめざすことにある.そこで,北海道の岩礁潮間帯に成立する海藻-植食者群集を対象に海藻と植食者の個体群制御機構におよぼす栄養塩(生産性要因)と乾燥度(環境ストレス要因)の影響を明らかにするための野外操作実験を行った。 その結果、栄養塩レベルと乾燥度は,この群集に対し,直接効果を通してそれぞれ独立して影響を及ぼしていることが判明した.すなわち,乾燥ストレスは葉状海藻を直接的に減少させ、その結果,競争的劣位種群である糸状海藻を増加させ,餌と住み場所の減少を通しメソグレーザーであるヨコエビを減少させた.栄養塩レベルの上昇は,糸状海藻と葉状海藻を増加させ,その結果,ヨコエビを増加させた. これらの結果は、岩礁潮間帯食物網の制御において,生産性要因(栄養塩)と環境ストレス要因(乾燥度)の影響は,ボトムアップ効果を通じて生じることを示している.この事実は、食物網構造制御に関する従来の2大仮説である環境ストレス仮説と消費生態系仮説のうち,後者を指示する.
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