2001 Fiscal Year Annual Research Report
アズキゾウムシに多重感染する利己的遺伝因子Wolbachiaの共進化動態
Project/Area Number |
13640625
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋田 正和 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40178950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深津 武馬 通商産業省工業技術院, 生命工学工業技術研究所, 主任研究官
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Keywords | Wolbachia / 細胞内共生 / 生殖と性の操作 / アズキゾウムシ / 生体内局在 / X染色体 / 固体ベース・モデル / 多重感染 |
Research Abstract |
本研究課題では、宿主アズキゾウムシに細胞内共生するWolbachiaが三重感染として蔓延した要因・個体群過程を、以下の3つのサブ・テーマについて研究した。 ●サブテーマ(1);Wolbachiaが細胞質からX染色体に移行していることの発見 野外個体群からは、まれに二重感染のアズキゾウムシが見つかっており、また、抗生物質処理を行うことで、二重感染/単一感染集団もすでに作成してある。それらを交配することによって、w-Con系統とw-Ori系統は細胞質遺伝(母性遺伝)するものの、w-Aus系統は雄の精子からも伝わり、しかもX-染色体に乗っていると仮定したときの伴性遺伝と一致したため、細胞質ではなくX-染色体にあることが分かった。X-染色体上の当該領域を配列決定したところ、かなりの領域に渡ってWolbachia由来の遺伝子が入り込んでいることが分かった。 ●サブテーマ(2);Wolbachiaの3系統の体内局在を分析 体内局在を、深津の研究室にある定量的PCRで調べた。w-Ori系統の体内局在は頭部・胸部・腹部・生殖器官・脂肪体・マルピーギ管など、体内の各組織に満遍なく存在していたのに対して、・w-Con系統は特に生殖器官(卵巣)に多く見られた。また、w-Aus系統は胚発生初期には全く検出されず、胚が発達するに従って徐々に細胞密度を増加させたが、それでもw-Ori、w-Conの2系統に比べると、1/10程度の細胞密度であった。 ●サブテーマ(3):メタ個体群構造に基づく個体ベースモデルのシミュレーション解析 モデル解析は嶋田が行った。三重感染が、宿主個体ごとに子孫に伝わる過程を個体ベースモデルでモデル化し、さらに、局所集団ごとの個体数変動(flush-crashcycle)とメタ個体群構造を導入した。パラメタ値はできる限り実験結果から推定した。その結果、メタ個体群構造を導入しない単一連続集団では侵入・蔓延できない初期条件でも、局所集団ごとの個体数増減サイクルがあると、確率的に三重感染タイプが定着でき、その局所集団を足がかりに、メタ個体群全体に伝播できることが示唆された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kondo N., Ijichi N., Shimada, M., Fukatsu T.: "Prevailing triple infection with Wolbachia in callosobruchus chinensis (Coleoptera Bruchidae)"Molecular Ecology. 11巻(印刷中). (2002)
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[Publications] Abe J., Kamimura Y., Shimada, M.: "Extraordinary female-biasec sex ratio and lethal male-male combat in a parasitoid wasp, Melittobia australica (Eulophidae)"Behavioural Ecology. 13巻(印刷中). (2002)
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[Publications] Ijichi N., Kondo N., Kawai, R., Shimada, M., Ishikawa H., Fukatsu T.: "Internal Spatio-temporal population dynamics of triple infection with Wolbachia in Callosobruchus chhinensis (Insecta : Coleoptera : Bruchidae)"Applied and Environmental Microbiology. 68巻(印刷中). (2002)