2002 Fiscal Year Annual Research Report
アズキゾウムシに多重感染する利己的遺伝因子Wolbachiaの共進化動態
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13640625
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋田 正和 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (40178950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深津 武馬 産業技術総合研究所, 主任研究員
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Keywords | 多重感染 / アズキゾウムシ / 細胞内共生細菌 / Wolbachia / 適応度コスト / 遺伝子水平転移 / 系統間相互作用 / 細胞質不和合性 |
Research Abstract |
宿主アズキゾウムシに同時多重感染している異なる3系統の細胞内共生細菌Wolbachiaの実態を解明し、多重感染が進化するための体内での相互作用の条件、メタ集団全体に拡がる過程の理論化をシミュレーション解析により進めた。具体的には、以下の課題を研究した。 (1)Wolbachia感染が宿主に与える適応度コスト Wolbachia感染による宿主適応度への影響を定量化した。その結果、Con-Oriの二重感染は、単一感染(Con)や非感染系統よりも適応度が有意に低いことが分かり、「多重感染のジレンマ」が定量的に示された。 (2)Wolbachiaから宿主アズキゾウムシへの遺伝子水平転移 Ausを持つ個体と持たない個体を用いた正逆交配実験により、宿主子孫に伝わるAus系統の遺伝様式を調べたところ、Ausの遺伝様式は宿主X染色体と連鎖した伴性遺伝と一致することが示された。アズキゾウムシの核型はXY型であることが既に確認されており、これらの知見を総合すると、Ausは細菌としての実体を持たず、宿主のX染色体上に存在する遺伝子断片であること、すなわちAusからの宿主X染色体への遺伝子水平転移が結論できた。 (3)体内での異なるWolbachia系統の相互作用 Wolbachia系統間の相互作用を、各系統の存在量(定量PCRにより遺伝子コピー数を測定)の比較から調べた。その結果、Con-Oriの二重感染では、Oriの存在量の分以上にConの存在量が抑制されており、干渉や他感作用が示唆された。 (4)宿主に与える細胞質不和合性の定量化 Wolbachia感染がもたらす細胞質不和合性の強さについて調べた。その結果、Con系統は孵化率0%の完全な不和合、Ori系統は孵化率60%の中程度の不和合を示し、Aus系統は不和合を示さなかった。 (5)メタ個体群構造に基づく個体ベースモデルのシミュレーション解析 上記のような実態を考慮して、個体ベースモデルを構築し、さらに野外でのアズキゾウムシのメタ個体群構造に着目して、局所集団の消滅-再移住過程を繰り返す状況で解析した。結果の一部は、国際生態学会議(ソウル)で発表した。現在、シミュレーション解析を繰り返して、多重感染の進化を規定する要因・条件を探っている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kondo N., Ijichi N., Shimada, M., Fukatsu T.: "Prevailing triple infection with Wolbachia in Callosobruchus chinensis (Coleoptera: Bruchidae)"Molecular Ecology. 11. 167-180 (2002)
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[Publications] Ijichi, N., Kondo N., Matsumoto R., Shimada M., Ishikawa H., Fukatsu T.: "Internal spatio-temporal population dynamics of triple infection with Wolbachia in Callosobruchus chinensis (Insecta: Coleoptera: Bruchidae)"Applied and Environmental Microbiology. 68. 4074-4080 (2002)
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[Publications] Kondo, N., Nikoh, N., Ijichi, N., Shimada M., Fukatsu T.: "Genome fragment of Wolbachia endosymbiont transferred to X chromosome of host insect"Proceedings of the National Academy of Sciences, USA. 99. 14280-14285 (2002)