2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640626
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
辻 瑞樹 琉球大学, 農学部, 助教授 (20222135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 大樹 森林総合研究所, 森林生物部, 主任研究官
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Keywords | 昆虫病原菌 / カビ / 社会性昆虫 / アリ / 赤の女王 |
Research Abstract |
前年度に引き続きアリをモデル生物に、社会性昆虫の赤の女王説の理論を実証的に検討した。最終年度の本年度は、特に社会性昆虫の赤の女王説の理論体系の中でも最も基本的な仮定である寄主遺伝子型×病原体遺伝子型の相互作用に焦点をあて実験的を行った。前年までの研究でトビイロケアリでは、ワーカーは野外で使っていた巣材とともに飼育された方が、同種他巣の素材で飼育された時より生存率が上がる傾向が見られた。可能な説明として、(1)寄主遺伝子型×病原体遺伝子型の相互作用および特異的記憶性免疫の存在、(2)他巣の匂いに曝されたことによるストレスがあげられたので、今回は両者の可能性を峻別するための実験を行った。土壌を、オートプレーブで滅菌したもの、ガンマー線により滅菌処理したものを用い、前年同様の無滅菌のコントロールと比較した。ガンマー線滅菌はオートクレーブ滅菌より非破壊的であるため、匂い成分の変化が少なく、ストレス原因説が正しければ本処理区でも無滅菌処理区と似た結果がでると期待された。結果、生存日数に関して無滅菌処理区でのみアリのコロニーの由来と土壌の由来の間に有意な相互作用が見られ、匂いストレスではなく菌との相互作用の関与を主張する仮説(1)を一部示唆する結果が得られた。しかし、平均死亡率には事前に予測したような処理区間の差異はみとめられず、さらに注意深い操作法の開発と追試の必要性が浮かび上がった。本研究の意義は、ミクロで複雑な昆虫社会の多様性がさらに細かな生物との相互作用によって進化したという、新しい生物観の妥当性を科学的に評価できることにある。また、アリ寄生性菌類の研究は、将来アリの防除のための応用技術の基礎となるかもしれない。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Sasaki, T., Tsuji, K.: "Behavioral property of the unusal large workers in the ant, Pristomyrmex pungens"Journal of Ethology. 21・2. 145-151 (2003)
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[Publications] Morinaga, S.-I., Tsuji, K., S.Sakai S.: "Consequences of differencesin flowering date in seed production in Heloniopsis orientalis (Liliaceae)"American Journal of Botany. 90・8. 1153-1158 (2003)
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[Publications] 辻 和希: "粘菌などにみられる微生物の社会行動-動物とのアナロジー-"別冊遺伝. 16. 76-85 (2003)
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[Publications] 佐藤大樹, 出川洋介, 町田誠: "ギフチョウ蛹からのコナサナギタケ(Paecilomyces farinosus)の出現記録"神奈川自然誌資料. 25(印刷中). (2004)