2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640628
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
工藤 慎一 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助教授 (90284330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野間口 真太郎 佐賀大学, 農学部, 助教授 (80253590)
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Keywords | 栄養卵 / 親の投資 / 亜社会性 / ツチカメムシ科 |
Research Abstract |
今年度は,栄養卵の形態的分化,さらに環境変動に応じた栄養卵投資の適応的調節を検討した。 栄養卵の形態的分化:栄養卵と受精卵の詳細な計測データに基づいて,形態的特徴の相違を明らかにし、それらを両者の機能的な役割から考察した。 野外で採集したベニツチカメムシの卵塊を用いて受精卵と栄養卵を比較したところ:(1)栄養卵は,長径,短径ともに受精卵よりも短く,また重量も軽いことが分かった。つまり,雌親は卵当たりの物質的投資を栄養卵で控えている。(2)卵塊当たりで見ると,栄養卵の長径,短径,重量の分散は受精卵のそれらより有意に大きかった。雌親は(卵当たりの)栄養卵への投資量を,受精卵への投資量程,一定になるようには制御していないと考えられた。 ミツボシツチカメムシの栄養卵も同様の形態的特徴があり,さらに卵殻構造にも受精卵と明らかな相違があった。すなわち,栄養卵はマイクロパイルをほとんど欠いており,受精能力を持たないと考えられた。これらの結果は,「栄養卵の生産コストは低い」ことを予測する,Crespi(1992)の「栄養卵=兄弟姉妹間共食いにおける親子間コンフリクト解消」仮説を支持している。 栄養卵投資の適応的調節:産卵前のミツボシツチカメムシ雌親を異なる餌条件(成熟度の異なるオドリコソウ種子)に置いて受精卵・栄養卵生産を比較し,餌資源の変動に応じた栄養卵投資の可塑性の有無を検討した。その結果,厳しい餌条件下では,雌親は卵塊当たり受精卵数を低下させるものの栄養卵数は変化させず,孵化幼虫当たりの栄養卵投資を高めることが明らかになった。これは,「雌親は予想される幼虫の餌環境に応じて適応的に栄養卵投資を調節している」ことを示している。雌親と幼虫は同一餌資源に依存しており,雌親の経験した餌環境は栄養卵投資の意思決定における信頼性の高いcueとなるものと考えられる。
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