2002 Fiscal Year Annual Research Report
淡水藻類の光合成生産と生残に対する太陽紫外線の影響
Project/Area Number |
13640633
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡辺 泰徳 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (20112477)
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Keywords | 紫外線 / 植物プランクトン / 藻類 / 生残 |
Research Abstract |
今後30年程度、増加傾向が確認されている太陽紫外線は陸上のみならず水中生物の活性と増殖にも影響を与えていることが判明している。本研究では湖沼植物プランクトンと河川付着藻類を対象生物として紫外線が光合成活性に与える阻害作用を解析し、藻類の生残と増殖への影響を実測することを目的とした。 初年度は緑藻クロレラの培養標品と、湖沼の植物プランクトンについて以下の研究結果を得た。クロレラは太陽光によって光合成と細胞増殖能の低下を示した。光合成の低下には太陽光中の紫外線A(波長320-400nm)が強く関与していた。増殖能の低下には強い可視光線(波長400-750nm)、紫外線Aおよび紫外線B(波長280-320nm)のいずれもが関与していたが、細胞中のDNA損傷(指標としてチミンダイマー生成量を測定)には紫外線Bのみが作用した。損傷を受けたDNAは照射後に修復されることが確認されたが、その際に可視光線があると回復が速くすすむので核酸の光修復メカニズムが関係していることが明らかになった。これら太陽紫外線の影響は、湖の浅い水深で起こることが証明された。第2年度は浅い水域から単離した緑藻4種と珪藻2種について生残と光合成阻害を検討したが、基本的にはクロレラで得られたのと同様の影響が生じていた。しかし、これらの野外種は、太陽紫外線による阻害程度がクロレラ培養標品に比べてやや小さい傾向が認められた。湖沼の植物プランクトンと河川底生の付着藻類について光合成速度を13C法によって測定した。その結果、紫外線Aが多く含まれる天候条件と浅い水深では光合成速度が大きく低下すること、この波長成分が減少し、可視光線のみが卓越する条件では高い光合成速度が得られることが実証された。光合成阻害と生残率については直接的な相関関係は得られなかった。
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