2002 Fiscal Year Annual Research Report
葉緑体発達過程における核コードσ因子の多面的機能の解析
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13640641
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金丸 研吾 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (90260025)
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Keywords | 葉緑体 / 転写制御 / tRNA |
Research Abstract |
高等植物において葉緑体が発達するには真正細菌型RNAポリメラーゼ(PEP)による色素体DNAの転写発現が必須である。PEPのプロモーター認識にはシロイヌナズナで6種類あるσ因子(SIG1-6)の重要性が予想されている。本研究では特にSIG2の機能をT-DNA挿入変異株sig2-1を用いて解析した。外見上は緑化不全と生育不良、葉緑体構成因子についてはクロロフィルと光合成系タンパク質の減少が観察されたが、意外にも、色素体DNA上の光合成関連遺伝子の転写量にはほとんど変化がなく唯一マイナーなpsaJのみ転写量の減少が観察されただけであった。そこで色素体DNAコードの全30種類のtRNAの発現に着目したところ、trnE, Y, D, V, Gが顕著に減少し、いずれも上流に高度に保存された真正細菌型プロモーター配列が見つかった。この点についてはさらにプライマー伸長法で正確なマッピングを行い裏付けを行った。ここで注目すべきは、tRNA-Gluが含まれていたことである。葉緑体でのテトラピロール合成はユニークでグルタミルtRNAが必須であることが既に知られており、SIG2依存的なtRNA-Gluの発現低下がクロロフィルの減少をもたらしたと考えられた。葉緑体形成過程では光合成系タンパク質とクロロフィルの爆発的かつ協調的合成が必要だが、本研究はSIG2がその共役制御因子のひとつである可能性を示唆している。さらに、sig2-1株では減少したクロロフィル合成中間体が、ALA添加で回復すること、近赤外光下での胚軸伸長もまたALA添加で相補されることがわかり上記を支持する結果が得られた。またsig2-1株では色素体で機能するもう一方のT7ファージ型RNAポリメラーゼ(NEP)に依存した転写が一様に上昇していた。この現象がSIG2とNEPの直接的な相互作用ではなく、特定のtRNAが関与していることも現在明らかにしつつある。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kengo KANAMARU: "Function of a nuclear-encoded sigma factor in chloroplasts; SIG2-dependent expression of some plastid-encoded tRNA genes including trnE in Arabidopsis thaliana"Symbiosis and Cellular Organelles. (in press). (2003)
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[Publications] Kengo KANAMARU: "An Arabidopsis sigma factor (SIG2)-dependent expression of plastid-encoded tRNAs in chloroplasts"Plant & Cell Physiology. 42. 1034-1043 (2001)