2001 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物嗅細胞のシグナル伝達における抑制性匂い応答のメカニズム
Project/Area Number |
13640674
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中谷 敬 筑波大学, 生物科学系, 助教授 (20125040)
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Keywords | 嗅細胞 / 抑制性応答 / シグナル伝達 / 匂い / cAMP / パッチクランプ |
Research Abstract |
脊椎動物の嗅覚における匂いによる抑制性応答がどのようなメカニズムで起こるのかを明らかにする目的で,パッチクランプ法を用い,単離したイモリ嗅細胞から匂い刺激に対する電気的応答を記録して解析し,以下の結果を得た。 1.パルス状の匂い刺激を与えると興奮性の応答電流が観察されるが,応答から回復する前に2つ目の匂い刺激を与えると,それに応じた電流の減少が観察された。これは,匂い刺激が興奮性の応答を引き起こすと同時に,嗅細胞レベルで応答電流の抑制をも引き起こすことを示す。 2.PDE(phospodiesterase)の阻害剤であるIBMXを投与すると,細胞内のcAMP濃度が上昇して興奮性の電流が発生するが,匂い刺激はIBMXに誘起された電流を抑制した。マクロ・パッチの状態では,ホールセル確立後に時間が経過すると,細胞内cAMP,GTPなどが電極側に流出し,電流は完全に消失するが,この時に匂い刺激を与えても電流の変化は観察されなかった。すなわち,抑制性応答は膜電流が生じている時にのみ観察され,膜電流がない状態では全く観察されなかった。この結果は,抑制性の応答は,抑制性の電流を生じることによってではなく,興奮性の電流を抑制することによって生じることを示唆する。 3.抑制性応答時の電位と電流の関係(I-V relation)を調べた結果,反転電位が0mV付近にあるI-Vカーブが得られたが,これば興奮性のコンダクタンスのI-Vカーブと同様であった。これは,抑制性応答と興奮性応答が同じコンダクタンスで起こることを示唆する。コンダクタンスの値を比較すると,抑制性応答時には減少することが明らかになった。このことから,抑制性応答は,興奮性電流を抑制することによって起こることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yamada, H.: "Odorant-induced hyperpolarization and suppression of cAMP-activated current in newt olfactory receptor neurons"Chemical Senses. 26. 25-34 (2001)
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[Publications] Yamada, H.: "Adenylate cyclase mediates olfactory transduction of amino acid responses in the newt"Zoological Sciences. 18. 159-164 (2001)