2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640677
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松島 俊也 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (40190459)
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Keywords | 脳 / 行動 / 記憶 / インプリンティング / 基底核 / シナプス / 強化学習 / 鳥 |
Research Abstract |
家禽雛鳥の認知機能、特に記憶形成と行動制御の脳内メカニズムを明らかにするために一連の実験を行った。個体レベルの行動学的解析・局所脳破壊実験・脳スライス標本を用いた神経生理学的解析・課題遂行中の覚醒自由行動下における大脳単一ニューロン活動の解析を、総合的に行なうことにより、以下の知見を得た。 (1)行動学的研究:基底核の局所破壊によって引き起こされる衝動的選択行動 既に我々は一連の報酬強化連合学習の実験系を、雛鳥で確立してきた。今回新たに遅延時間を導入し、(1)直ちに得られる小さな報酬、と、(2)数秒待って得られる大きな報酬、の選択行動課題を確立した。一般的に、1-2秒以内の遅延時間では、雛はより大きな報酬を選び、2-3秒を越える遅延時間では、より小さな報酬を選ぶ。大脳腹内側の尾状核・側坐核領域の局所破壊を行ったところ、常に遅延時間の短い(よって、より小さな)報酬を選ぶように変化した。この時、色弁別能・覚醒状態・運動機能・新規の連合学習の成立などには一切の影響が生じなかった。この領域がからは、直近の未来における報酬予期を符号化するニューロン活動(単一ニューロンレベル)が見出されている。破壊実験の効果(衝動的選択行動)は、予期の選択的障害によるものと解釈することができる。 (2)記憶の細胞表現に関するシステム生理学的研究:扁桃体における報酬関連信号 自由歩行下の扁桃体関連領域より単一ニューロン活動を導出し、GO弁別課題・GO/NO-GO弁別課題遂行中の関連活動を解析した。その結果、大脳腹側部(尾状核・側坐核領域)と同様、報酬の獲得に先立って選択的な活動を示すニューロン群が見出された。これは、認知・情動・記憶が、雛鳥においても哺乳類と同様、扁桃体・基底核系において統合的に形成処理されていることを示唆する。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Yanagihara, S., Izawa, E.-I., Koga, K., Matsushima, T.: "Reward-related neuronal activities in basal ganglia of domestic chicks"NeuroReport. 12. 1431-1435 (2001)
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[Publications] Izawa, E.-I., Yanagihara, S., Atsumi, T., Matsushima, T.: "The role of basal ganglia on reinforcement learning and imprinting in domestic chicks"NeuroReport. 12. 1743-1747 (2001)
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[Publications] Matsushima, T., Izawa, E.-I., Yanagihara, S.: "D1-dependent synaptic potentiation in the basal ganglia of quail chick"NeuroReport. 12. 2831-2837 (2001)
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[Publications] Hayashi, I., Ono, Y., Matsushima, T.: "Visual cues for suppressing the isolation-induced distress calls in newly hatched quail chicks"Zoological Science. 18. 1065-1071 (2001)
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[Publications] 伊澤栄一, 柳原真, 松島俊也: "技術ノート:可動式ワイヤー電極による単一ニューロン活動の記録法"比較生理生化学. 18. 113-118 (2001)
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[Publications] 松島俊也: "鳥:もう一つの知性"解剖学雑誌. 76. 239-242 (2001)