2002 Fiscal Year Annual Research Report
カナワラビ属の種分化,特にシンガメオン構造に関する細胞学的・分子遺伝学的解明
Project/Area Number |
13640697
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高宮 正之 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (70179555)
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Keywords | シダ植物 / カナワラビ属 / アロザイム多型 / 葉緑体遺伝子 / SSCP / 形態 / 雑種 / シンガメオン |
Research Abstract |
本年度は、コバノカナワラビとホソバカナワラビについて、多くの中間雑種が確認されている福岡県福岡市城南区油山集団の調査をおこなった。99個体について、酵素電気泳動による核DNA分析、SSCP法による葉緑体DNA分析、外部形態の量的形質調査を用いて、それぞれの核・葉緑体遺伝子型と外部形態を調べた。比較のため、他集団の32産地85個体についても同様の分析をおこなった。アロザイム多型分析では、マーカーとなるAATとPGIの2酵素3遺伝子座を用いた。葉緑体遺伝子型分析では、trnW(CCA)-trnP(UGG)の遺伝子間領域について、PCR産物を用いたSSCP分析をおこなったところ、2種には種内変異が無く、種間にはバンドパターンに差があった。油山-集団について、形態だけで各個体を分類せずに、SSCP分析とアロザイム多型分析で得られたマーカーを用いて2種とその中間雑種を分類した。中間雑種は、1回の交雑で説明のつく個体をF_1、2回以上の交雑でないと説明がつかない個体をF_2と分類した。99個体のうち35個体がコバノカナワラビ、16個体がホソバカナワラビ、46個体がF_1、2個体がF_2に分類できた。コバノカナワラビに分類した1個体がホソバカナワラビに近い形態をとっていたため、これをF_2として形態測定を用いた散布図を作ったところ、コバノカナワラビ、ホソバカナワラビ、中間雑種はある程度のまとまりを作った。以上の結果から、コバノカナワラビとホソバカナワラビの間には、稔性を持った中間雑種F_1、F_2が存在することが確認できた。シダ植物には多くの雑種の報告があるが、ほとんどものはF_1である。F_1が稔性を持って次世代を作るシダ植物の例は極めて少なく、カナワラビ属の種分化がシンガメオン構造をともなったこれまでに無い特殊なものであることが判明した。
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