2001 Fiscal Year Annual Research Report
ナメクジウオの乳酸脱水素酵素(LDH)に関する分子進化学的・比較酵素学的研究
Project/Area Number |
13640702
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
今井 利夫 東邦大学, 理学部, 教授 (10050634)
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Keywords | ナメクジウオ / LDH遺伝子 / LDHアミノ酸配列 / 分子進化 / 比較酵素学 |
Research Abstract |
LDHの分子進化学的・比較酵素学的研究の一環として、動物分類学上、脊椎動物の前段階に位置し脊椎動物の祖先型の諸特性を有していると推測される原索動物ナメクジウオ(Branchiostoma belcheri)のLDH遺伝子の解析を試みた。ナメクジウオは全組織のホモジネート液よりmRNAを分取後、total cDNAを合成しPCRの試料とした。プライマーは高等脊椎動物のLDH遺伝子における活性中心および機能領域の塩基配列を基に6種類作製した。これらプライマーを用いてナメクジウオ由来のcDNAをPCRで増幅後、2%agarose gel電気泳動法でPCR産物を確認し、これをベクター(pTZ19R)にサブクローニングした。塩化カルシウム法でXL1-Blueに形質転換させ、培養後、プラスミドDNAを回収し塩基配列を解析した。 その結果、999塩基から成るナメクジウオLDH遺伝子の全配列がはじめて明らかとなった。他脊椎動物のLDH遺伝子との相同性は67〜86%(マウス:86%,チキン:78%,ワニ:81%,アフリカツメガエルウス:67%,ツノザメ:74%)であることが分かった。また、この塩基配列および対応するアミノ酸配列ならびにその二次構造予測の結果を他生物のLDHと比較考察したところ、LDHの酵素学的機能に関与する領域は完全に保存されていたが、周辺領域については相違する特徴的な領域のあることも明らかとなった。特に、アイソザイム特異領域のアミノ酸配列から推測すると相対的にLDH-A遺伝子に近似した構造特性を有している可能性が示竣された。 以上、当初予定した今年度の計画が達成できた。
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