2002 Fiscal Year Annual Research Report
ナメクジウオの乳酸脱水素酵素(LDH)に関する分子進化学的・比較酵素学的研究
Project/Area Number |
13640702
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
今井 利夫 東邦大学, 理学部, 教授 (10050634)
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Keywords | ナメクジウオ / LDH / インビトロ翻訳 / 酵素学的性質 |
Research Abstract |
LDHの分子進化学的・比較酵素学的研究の一環として、動物分類学上、脊椎動物の前段階に位置し、脊椎動物の祖先型の諸特性を有していると推測される原索動物ナメクジウオ(Branchiostoma belcheri)の遺伝子より大腸菌の発現系を用いてLDHタンパクをインビトロ翻訳後、得られた翻訳産物の酵素学的性質を検討した。すなわち、ナメクジウオ組織よりmRNAを分取(4μg))後、cDNA Synthesis kitを用いてcDNAを合成(2μg)した。ナメクジウオLDHの塩基配列から相補的なプライマーを用いてPCRによりナメクジウオLDH cDNA ORFを合成し制限酵素EcoR5で切断後、発現ベクターpScreen-bにライゲーションし塩化カルシウム法で宿主BL21(DE3)に形質転換させた。形質転換されたプラークはIPTGで誘導しLDHタンパクを発現させ、大腸菌の懸濁液100mlより約2.52μgのLDHタンパクを単離した。 この様にしてin vitro翻訳したLDHタンパクは分子量が140kDaおよび等電点がpI7.5でありメダカのLDH_5などと近似していた。酵素学的性質は、至適pHがL-P反応でpH9.3-9.6、P-L反応でpH 7.4-7.6となり、熱安定性は50℃、30分の孵置においても50%の残存活性が認められた。また、見掛けのkm値もそれぞれピルビン酸が1.7×10^<-4>M、乳酸が1.6×10^<-2>M、NADHが3.7×10^<-4>MおよびNADが8.2×10^<-4>Mとなり、魚類のLDHと近似した傾向が認められた。各種金属イオンの影響については、Mn^<2+>、Zn^<2+>およびSn^<2+>で著しい阻害が認められ、この様な傾向はPCMBでも同様であった。これに対し、Hg^<2+>およびSn^<2+>では逆に賦活作用を有することが分かった。さらに、3種類のNAD^+アナログに対する反応性においては、ピリジン環に置換基を有するNAD^+のうち、APADのみに1.7倍もの反応性の向上が認められた。 以上により、ナメクジウオLDHの酵素学的性質がはじめて明らかとなり、今年度の計画が達成できた。
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