2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640715
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
真鍋 義孝 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (80131887)
|
Keywords | 歯の人類学 / 南西諸島 / 沖縄本島 / 歯の非計測的形質 / 集団史 / Sinodont / Sundadont |
Research Abstract |
日本人の形成過程に関する最も重要な仮説「日本人の二重構造モデル」の部分的論拠になっている「アイヌ・沖縄同系説」の検証とその検証結果の要因の解明を目的として、本研究を行っている。 南西諸島における現代人の歯の形態の地域的変異に関しては、北端の種子島、中央の沖縄本島、および南端に近い石垣島の調査から、南西諸島の集団は全体的に縄文人やアイヌよりも北部九州弥生人や現代日本人に近いことをすでに明らかにしている。このことから、少なくとも現代人に限定した場合には「アイヌ・沖縄同系説」が否定されることが示唆されている。また、種子島弥生時代人の歯の形質は縄文時代人的特徴を示しているが、種子島現代人は縄文的特徴より渡来系的特徴をやや強く示し、大きな時代的変化がみられた。これらのことから南西諸島の集団を全体的にみた場合、先史時代には縄文時代人的特徴を持っていたが、その後渡来系集団の遺伝的影響を受け、渡来系集団的特徴を強くしていったものと推測される。このような仮説のもとで、南西諸島において縄文時代人的特徴から渡来系的特徴に変化した時期を特定するためには、現代人ではなく、古人骨を調査することが不可欠である。本年度は、沖縄本島から出土した中世と近世の人骨について、歯冠と歯根に出現する非計測的形質の頻度、および計測的形質を調査した。いずれの個体も歯の保存状態が悪く、利用可能なデータ採取はかなり困難をきわめたが、歯冠の崩壊を修復しながら、レプリカを作成して歯牙形態の永久保存に努めた。採取したデータの統計処理を試みたが、統計解析に十分な資料数にはまだ達していない。次年度はさらに資料数を追加することにより、時代間の分析についてまとめる予定である。
|